HELLSING episode 6
01 ナレーション 今まさに欧州ヨーロッパ ロンドンに向け超巨大飛行船が飛び立とうとしていた。飛行船の中央部最上段に「ミレニアム」指揮者である少佐と呼ばれる男が立っている。眼下には埋め尽くす程の武装親衛隊が羨望の眼差しで少佐を見上げている。少佐はゆっくりと壇上にあがった。
少佐 諸君、私は戦争が好きだ。諸君、私は戦争が好きだ。諸君、私は戦争が大好きだ。
殲滅戦が好きだ、電撃戦が好きだ、打撃戦が好きだ、防衛戦が好きだ、包囲戦が好きだ、突破戦が好きだ、退却戦が好きだ、掃討戦が好きだ、撤退戦が好きだ。
平原で、街道で、塹壕で、草原で、凍土で、砂漠で、海上で、空中で、泥中で、湿原で。
この地上で行われるありとあらゆる戦争行動が大好きだ。
戦列をならべた砲兵の一斉発射が轟音と共に敵陣を吹き飛ばすのが好きだ。
空中高く放り上げられた敵兵が効力射でばらばらになった時など心がおどる。
戦車兵の操るティーゲルの88mmが敵戦車を撃破するのが好きだ。
悲鳴を上げて燃えさかる戦車から飛び出してきた敵兵をMGでなぎ倒した時など胸がすくような気持ちだった。
銃剣先をそろえた歩兵の横隊が敵の戦列を蹂躙するのが好きだ。
恐慌状態の新兵が既に息絶えた敵兵を何度も何度も刺突している様など感動すら覚える。
敗北主義の逃亡兵達を街灯上に吊るし上げていく様などはもうたまらない。
泣き叫ぶ捕虜達が私の振り下ろした手の平とともに金切り声を上げるシュマイザーにばたばたと薙ぎ倒されるのも最高だ。
哀れな抵抗者達が雑多な小火器で健気にも立ち上がってきたのを80cm列車砲の4.8t榴爆弾が都市区画ごと木端微塵に粉砕した時など絶頂すら覚える。
露助の機甲師団に滅茶苦茶にされるのが好きだ。
必死に守るはずだった村々が蹂躙され女子供が犯され殺されていく様はとてもとても悲しいものだ。
英米の物量に押し潰されて殲滅されるのが好きだ。
英米攻撃機に追いまわされ害虫の様に地べたを這い回るのは屈辱の極みだ。
諸君、私は戦争を地獄の様な戦争を望んでいる。
諸君、私に付き従う大隊戦友諸君。
君達は一体何を望んでいる? 更なる戦争を望むか?
情け容赦のない糞の様な戦争を望むか?
鉄風雷火の限りを尽くし三千世界の鴉を殺す嵐の様な闘争を望むか?
ナレーション 武装親衛隊が合掌する。戦争!戦争!戦争!と。
少佐 よろしい ならば戦争だ 我々は渾身の力をこめて今まさに振り降ろさんとする握り拳だ だがこの暗い闇の底で半世紀もの間堪え続けてきた我々にただの戦争ではもはや足りない!! 大戦争を!! 一心不乱の大戦争を!!
我らはわずかに一個大隊 千人に満たぬ敗残兵に過ぎない だが諸君は一騎当千の古強者だと私は信仰している ならば我らは諸君と私で総力100万と1人の軍集団となる 我々を忘却の彼方へと追いやり眠りこけている連中を叩き起こそう、髪の毛をつかんで引きずり降ろし眼を開けさせ思い出させよう、連中に恐怖の味を思い出させてやる、連中に我々の軍靴の音を思い出させてやる、天と地のはざまには奴らの哲学では思いもよらない事があることを思い出させてやる、一千人の吸血鬼の戦闘団で 世界を燃やし尽くしてやる。
「最後の大隊大隊指揮官より全空中艦隊へ」 目標英国本土ロンドン首都上空!! 第二次ゼーレヴェー作戦 状況を開始せよ いくぞ 諸君。
ナレーション 英国 安全保障特別指導部 本営 壁を覆う巨大モニターに世界各国の情報が映し出されている。軍の幹部達が厳しい表情で通信士に指示を出している。奥の席には英国海軍中将 ペンウッド卿が居る。扉が開き、インテグラとウォルターが入ってくる。
インテグラ ヘルシング、女王陛下の御命によりて まかりこしました。
ペンウッド 来たか、インテグラ卿
海軍中佐 将軍!まさか連中の手を借りるおつもりですか!これは国家の安全保障に関する事項です。彼らのような怪しげな連中の同席を許すおつもりか。これは我々海軍が管轄とする領域だ。君達のような者の出る幕ではない帰りたまえ!
10 インテグラ 帰っても宜しいが、本当によろしいのか?
海軍中佐 なんだと!?
ペンウッド 待ちたまえ・・・頼む、同席してくれたまえヘルシング卿。
インテグラ ・・・現状はどうなっておりますか、将軍。
ペンウッド 今より18時間前、大西洋上で演習中だった我々帝国海軍新造空母「イーグル」が所属不明のヘリの接近を告げる報告を最後に通知が途絶した。現在は大西洋上ポーリントン洋上300km地点にて静止している。本来ならば我々の処理する事態だ。が、数時間前に送られてきた衛星写真だ・・・見たまえ。これは我々の範疇では無い、狂気の沙汰だ。
ナレーション 衛星写真に写っていたのは、空母の甲板にペイントされた「ナチス」のマークだった。
インテグラ 「ミレニアム」「最後の大隊」
海軍中佐 馬鹿馬鹿しいっ!吸血鬼?ナチの残党?冗談も大概にしろ!貴様らとオカルトごっこしているヒマは無い!将軍!貴方も貴方だ 正気とは思えない!これは艦内反乱か暴動だ。貴様らがどれほど女王陛下に信頼されているか知らんが、貴様らの特権とやらが何もかもに通じると思ったら大間違いだ。ひっこんでてもらおうか。
インテグラ ならば宜しい、お手並みを見せて頂きたい。
海軍中佐 ・・・っ!状況を伝えてやれ。
20 通信士 はっ、事件発生後、数度に渡って回線を開こうと致しましたが、全く何の応答もありません。数度の偵察機を出しましたが全く何の反応もありません。まるで無人船・・・いや、幽霊船だ。いや、最新の情報では甲板に一人だけ人影が・・・日傘をさしたような・・・。現在調査 制圧のために特殊空挺の二個小隊がヘリコプターで接近中、もう間もなく到着のはずです。
インテグラ 兵が哀れだ。
海軍中佐 何だとお!?
インテグラ 将軍、これだけは言えます。
ペンウッド 何だ?
インテグラ 全滅です。貴がたは30名の肉塊を生産したに過ぎない。
海軍中佐 馬鹿なことを!ふざけるな!
通信士 !ヘリ撃墜されました!
ペンウッド な・・・何だと!?空母の搭載兵器か!?
通信士 いえ・・・いえっ、違います!
30 ペンウッド 甲板上の人間の発砲した・・・マスケット銃のただの一発で・・・だと!?
海軍中佐 生存者は・・・特殊空挺の生存者はっ、こんな馬鹿な事は・・・ありえんっ!空挺司令部へ連絡を取れ!第2派隊の長を呼び出せ!こんな馬鹿な事があるのか?誤認ではないのか?確認を・・・
インテグラ 茶番だ。
海軍中佐 な!何だと!
インテグラ 茶番だと申し上げただけだが。
ナレーション そう言うとインテグラは席を立った。
ペンウッド ど・・・どこに行く気だインテグラ卿
インテグラ 付き合いきれませんな、こんな茶番をしている間にも何物にもかえられぬ時間は出血し続けている。我々はこの一連の事象を吸血鬼の行動と認識し、我々は独自の行動を取らせて頂く。
海軍中佐 な・・・何だと!?馬鹿も休み休みに言え!
インテグラ ペンウッド卿、お伝えしましたぞ。
40 海軍中佐 将軍!
ペンウッド わかった。わかったともインテグラ。諸君らヘルシングの自由を認める。
インテグラ 了解。
ナレーション インテグラとウォルターは部屋を後にし、廊下を歩きながら話している。
インテグラ どう思う。
ウォルター はっ、囮もいい所ですな、あからさまな。時間が たてば たつ程 奴らの思うツボです。
インテグラ だが放ってもおけん。幽霊船にしてはあまりに物騒すぎる。
ウォルター 自ら仕掛けて来る事は無い、しかし無視する事など出来ない、近づけばこれを射つ。これは典型的な示威籠城戦ですな。
インテグラ 海は城壁であり無限に広い堀でもあるという訳か、そしてあの「魔弾」あの魔弾の前に近付ける物などある訳もない。だが連中はもはや脱出できまい。海は連中、吸血鬼にとって地獄の釜の底も同然だ。「イーグル」艦上から出たならば、そこに落とされる。だがそれは我々とて同じ事だ。
ウォルター ハッ、左様です。
50 インテグラ アーカードやセラスをどうやってあの海上の鋼鉄の城塞に送りこむのだ。・・・「大型艦船」。
ウォルター いいえ、時間が掛かりすぎます。奴らが艦をいつまでも静止しているとも限りません。・・・「小型快速船艇」
インテグラ いや、大口径対空砲やガトリング群がある。弾雨の嵐に耐えきれるとは思えん。・・・「航空機、真上からの降下」
ウォルター いいえ、艦載の対空ミサイルで真上はおろか接近すらもできませぬ。・・・「デコイ・チャフを大量に使用して航空機の使用」
インテグラ いや、ミサイルは誤魔化せても「魔弾」がいる。
ウォルター 結論としましては、ミサイルも弾雨も、魔弾をも物ともせず、海上の空母の甲板上にアーカード様を立たせる事の出来る方法。
インテグラ まさしく無理難題だな。
ウォルター いえ、あります。恐らくこの世で一機種のみ、その無謀を叶える機体が。・・・EXP−14LIE高々度実験機。去年完全退役した米軍のSR−71偵察機、その内の我が英空軍技術局に売却された二機の内の一機です。もっとも米軍のままなのは外側だけ、内部は殆ど別機といっていいでしょう。そもそもは複座の偵察機ですが、偵察能力は とっぱらい単座にしたててあります。すなわち高々度高速度レコードを塗り替えるための専用機です。成層圏ギリギリをマッハ3以上で飛ぶ化物。対空ミサイルでの撃墜は不可能です。冷戦が生んだ芸術ですな。
ナレーション 英空軍の戦闘機部隊が空母「イーグル」を射程に捕らえミサイルを発射した刹那、魔弾がミサイルを捕らえた。驚愕する操縦者の体を幾重にも弧を描いて魔弾が貫通していく。戦闘機部隊は次々と爆発炎上し海の藻屑と消えていった。戦果の喜びに震えるリップヴァーンは真逆の振るえを感じた。魔の来訪者の接近を直感したのだ。リップヴァーンはその場に跪き天を見上げた。成層圏より近づくものの名はEXP−14LIE。操縦席に佇むはアーカード。ヘルシングの切り札である。魔弾が弧を描きアーカードの機体を幾重にも貫いていく。小さな爆発を繰り返した機体は中央部から大きな爆発を上げ火を吹き上げた。空母の吸血鬼たちが喜びの声を上げる。だがリップヴァーンは気付いた。撃ち倒したはずの機体が、全く別の物に変わっていくのを。燃え盛る機体はアーカードの放つ黒き闇に包まれようとしていた。アーカードは機体すらも使役したのだ。空母に直角に落下した機体は甲板に突き刺さり、さながら十字架のごとき形のまま燃え上がった。業火の中からアーカードが現れた。リップヴァーンは体を震わせながらマスケット銃を構えた。アーカードは無造作に銃を取り上げるとリップヴァーンの心臓に突き刺した!吹き出る鮮血とともにアーカードはリップヴァーンの咽元に喰らいつき血をすすった。
少佐 中尉、良くやった作戦は成功だ完全に。水面にいくら石を投げ込んだとて、影をいくら踏みつけたとて、水面は消えず影は消えず。そういうものなのだ、それは「死の河」だ。それは生も死も全てペテンだ。何とも不死身で無敵で不敗で最強で馬鹿馬鹿しい。だが我々は打倒する。君の未帰還をもって我々はアーカードを打倒する。
博士 リップヴァーンの発火装置を作動させます。
60 少佐 やめろ。
博士 はっ!ですが・・・しかし、このままみすみす・・・
少佐 彼女は任務を果たした、完全に。完全に、だ。焼く事は許さん。
博士 は・・・はい。
少佐 傾注!さようなら中尉。ヴァルハラで会おう。さようなら、さようなら中尉。
博士 さようなら中尉
少佐 ジークハイル。
ナレーション 笑っている。アーカードが笑っている。リップヴァーンを喰らい、使役し、新たなミレニアムの狂気を知りえたアーカードが高らかに笑っている。
少佐 楽しいかアーカード。戦争は楽しい!凱歌を歌えアーカード。そしてそこで見ていればよい。私には見えるぞ、もう私の近眼の眼鏡ごしにもはっきりと見える。あの都市の輝きが、あの都市の劣塔が!凱歌を聞けアーカード。そしてそこで見ていればよい。大英帝国の崩壊を。
ナレーション 英国 安全保障特別指導部 本営
70 通信士 将軍!
ペンウッド 何事だ?
通信士 政府中央情報統制本部 通信途絶・・・連絡が取れません・・・。
ロンドンBTN社管制局と通信途絶!
現在首都圏広域に民生通信電話回線が不通になっています!
アーク空軍基地連絡ありません!
ドールセトシャーサウスプール両AB同様にです。
陸軍キングスグリニッジ・バースチェスター連隊本部通信途絶!
太平洋艦隊艦隊司令部通信途絶!
国防本部本部情報管制部連絡ありません!
テムズ河上駆逐艦フォルテクレスト通信途絶!
各警戒線機連絡途絶!
ペンウッド 馬鹿な・・・!?戦争でも始まったとでもいうのか!?
通信士 近衛兵アイリッシュ連隊本営より打電!「交戦中!現在正体不明の敵と交戦中!化物だ助けてくれ化物!」
インテグラ 始まった・・・そう とうとう、戦争が始まったのです。
ナレーション 扉が打ち破られ武装した兵士が雪崩れ込んでくる。
ペンウッド 何だ!何だ貴様ら!
海軍中佐 おっと妙な真似はやめて頂こうヘルシング卿、この施設はこれより「ミレニアム」の支配下となる!
ペンウッド 中佐!どういう事だこれはっ!
80 海軍中佐 やかましい!!こういう事ですよ将軍。吸血鬼とは素晴らしい!俺は何て幸運なんだ、ハッハハハハ。まさかあのヘルシング卿まで捕まえられるとはなぁ。少佐殿もさぞかしお喜びになるに違いない!
インテグラ クックックックックッ。
海軍中佐 貴様ぁ・・・女ぁ!何がおかしい!
インテグラ お前達は生まれたばかりの赤子の様な吸血鬼で私達はその吸血鬼の殲滅機関。しっぽも取れぬ赤子のカエルが蛇を前にして「幸運」とは。笑える冗談だ売国奴。あの世で伍長に鉄十字章をもらうといい。
海軍中佐 き・・・貴様あ〜っ!
インテグラ 執事、仕事だ。
ウォルター わかりました、お嬢様。さて、御相手 仕ろうぞ!赤子共!
海軍中佐 こっこのぉ爺いっ!
ナレーション ウォルターのワイヤーが吸血鬼たちを切り裂いた。
インテグラ 大丈夫ですかペンウッド卿。私はてっきり あなたが裏切っていたのかと思いましたよ。
90 ペンウッド ・・・私は無能かもしれんが、卑怯者ではないよインテグラ。
通信士 将軍!大変です将軍!477空の民間機がロンドン南方ニューフィルズ上空で北上する飛行船団を目撃したと・・・
ペンウッド 飛行船?飛行船だと!?何かの間違いではないのか!?
通信士 飛行船です。それも・・・信じ難いほど巨大な・・・。
ペンウッド レーダーは何をしていた?これ程接近するまで誰も気づかぬはずがない!
通信士 各サイトは沈黙したままです!
ペンウッド 防空本部は何をしている!
通信士 防空本部とは現在通信途絶しています!ニューフィルズからロンドンまで直線距離で約100km!約数十分で飛行船団はロンドン上空へ!
博士 少佐、欧州・・・ヨーロッパの灯が見えてきました。ロンドンです。
少佐 そうだ、あれが遂に我々が待ちに望んだ欧州のひかりだ。私は諸君らを約束通り連れて帰って来たぞ。あの懐かしの戦場へ、あの懐かしの戦争へ。そしてアシカは遂に大洋を渡り陸(おか)へとのぼる。ミレニアム大隊各員に伝達!大隊長命令である!・・・さあ諸君、地獄を作るぞ。大隊総員!傾注!・・・諸君、夜が来た。無敵の敗残兵諸君、最古参の新兵諸君、万願成就の夜が来た 戦争の夜へようこそ!目標はヘルシング、そしてアーカードの打倒だ。ゾーリン!ソーリンブリッツ中尉!空中巡洋艦ツェペリン2と一個中隊を与える。麾下中隊(きかちゅうたい)を先遣隊とする。郊外ヘルシング本部へ急行せよ。だが強攻は避けたまえ、私と本体の到着を待つべきだ。
100 博士 少佐の お手をわずらわせる事もありませんでしょう、アーカードのいないヘルシングなど赤子同然。
少佐 あの娘達がいる。あの娘達を甘く見るな。インテグラ・ヘルシングとセラス・ヴィクトリアを甘くみるな!彼女はヘルシングの末裔だぞ、史上最強の吸血鬼狩り一族の当主だ。インテグラ・ファルブルケ・ウインゲーツ・ヘルシング あのアーカードが認めた あのアーカードの「主人」だ。そして「吸血鬼」セラス・ヴィクトリア 彼女は・・・ははは、奇跡のような存在だ、冗談の産物といってもいいがな。そして恐らく彼女は自分でも気がついてすらいない!こいつはなんとも楽しいことじゃないか。2人共 恐ろしく未熟で不完全で だがそれ故に私は彼女らをアーカード同様「宿敵」に値する存在だと結論している。いいかねゾーリン、もう一度いう、強攻するな私の到着を待て。
よろしい よろしい! ならば・・・堰(せき)を切れ! 戦争の濁流の堰を切れ! 諸君! 第一目標はロンドン全域! テムズ西岸 議事堂! ビックベン! 首相官邸! 内外務省省庁舎!国防総省舎! 政官庁舎群! バッキンガム宮! セントジェームス宮! セントローソルー宮! ハロンプルトン別宮! ハムスウォース別宮! ホースガーズ! スコットランドヤード本庁! 大蔵会議局! ウエストミンスター寺院! ピカデリー ソーホー シティー サザーク 全て燃やせ 中央政府院! ロンドン・キャベンディシィア連隊本部施設! セントポール大聖堂!
博士 少佐殿! キャビネットウォールームスは?
少佐

爆破しろ! 当然だ 不愉快極まる 欠片も残すな

博士 トラファルガー広場はいかがしますか少佐殿!!
少佐

燃やせ ネルソン像は倒せ ロンドン塔 大英博物館 大英図書館 全部破壊しろ 不愉快だ

110 博士 タワーブリッジは?
少佐

落とせ ロンドン橋もだ 歌の様に

博士 帝国戦争博どうしましょうか
少佐

爆破しろ、かまうものか目についた物は片端から壊し目についた者は片端から喰らえ。存分に食い存分に飲め。この人口800万の帝都は今宵諸君らの晩飯と成り果てるのだ。さあ!諸君!殺したり殺されたり、死んだり死なせたりしよう。さあ、乾杯をしよう。宴は遂に今宵、此の時より開かれたのだ。乾杯!乾杯!!
大打撃!大打撃!V1改全弾発射!続いてV2改第2派発射及び・・・!降下準備!大打撃!大打撃! 大打撃! まだだ!まだだ!もっと戦果を!もっと戦火を!

博士 降下兵団第一中隊第二小隊長ラインボートフォルトナー曹長落着。英国着上陸第一号者です、戦闘開始!英国上陸成功!先陣を切りました。
少佐 よくやった騎士十字章ものだ。後で処女の血をおごってやると伝えろ。
ナレーション 英国 安全保障特別指導部 本営
通信士 市街全土が攻撃を受けています!シティ・サザークで大規模火災発生中!飛行船団からのロケット攻撃です!ロンドン市街150ヶ所以上で爆発炎上!
ペンウッド 空軍は・・・空軍は何をしているんだ!
通信士 空軍総局各基地施設通信途絶!
首相・首脳部、軍部上層とも連絡取れません、回線網、通信網、命令系統はズタズタです。
英国の主要な軍施設・通信中枢、指揮中枢役150ヶ所が通信途絶もしくは正体不明の敵勢力と交戦中です。
120 インテグラ 先程我々を襲った連中と同じですな。「永遠の命」「吸血鬼」等という甘い果実に誘われた五月蠅が多かったという事・・・売国奴が。ここも奴らの攻撃目標になっているはず、早く脱出するべきですペンウッド卿。
ペンウッド 君は き 君は君の機関へ一刻も早く帰りたまえ、君には君にしか出来ない事が、つとめがある・・・!私は だ 脱出できない、逃げられない。そ それだけは出来ない。
通信士 市街上空の飛行船団から兵士達が降下中・・・これはっ、こんな馬鹿な・・・ド・・・ドイツ兵です!武装親衛隊です!!
インテグラ 脱出するんですペンウッド卿、脱出を!半刻とせず吸血鬼の群れがここに押し寄せて来ます。この有様ではここの指揮能力はほとんどありません。・・・死ぬ気ですか。
ペンウッド もしかしたら・・・もしかしたら通信が回復して命令が伝達するかもしれない。どこかの基地が敵を撃退して我々の指示を待っているかもしれない。わ 私はここの指揮者だ。ここが生きている限り離れる訳にはい いかないだろう。インテグラ、私は駄目な男だ、無能だ、臆病者だ。自分でも何故こんな地位にいるかわからん程駄目な男だ。生まれついての家柄と地位だけで生きてきたも同然だ。自分で何もつかもうとしてこなかった。いつも人から与えられた地位と つとめをやってきた。だから せ せめて つとめは、この つとめだけは全うしなきゃならんと思う・・・んだが・・・。行きなさい、行ってくれインテグラ。君には、君らには、君らにしかできない つとめがある。
ナレーション インテグラは懐の銃をペンウッドの前に置く。
インテグラ 法儀済の粒化銀弾頭が入っています。ただの鉄よりは連中に効果的でしょう。・・・おさらばです!御武運を、ペンウッド卿。
ペンウッド ああ。そして君もな、ヘルシング卿。さあ君らも早く脱出しろ逃げるんだ。ここは必要最小限な人員だけでいい。というかもう、その、なんていうか、あれだ、ぶっちゃけ私だけでいいんじゃないかな、みんな脱出しなさいよ早く。
通信士 ・・・ぷ ぷはっ、あはははは。
ペンウッド なっ何だっ何だっ何がおかしい、笑ってる暇なんかないぞっ、早く逃げるんだ!命令だぞっ。
130 通信士 再度国防総局へ通信を試みます。生きている回線の創作を再開します。
ペンウッド !何をやっとるんだっ、早くっ、早く脱出しろっ!
通信士 被害状況を再整理します。隊伍を組織して直接連絡を取りに行って下さい!生き残った兵と弾薬と武器を集めて守備隊を組織して下さい!出入り口にバリケードを構築します!
ペンウッド な・・・何をっ、何をしておるバカモンッ、こんな事に付き合う必要はないっ!
通信士 何いってんです提督。あなたじゃコンソール一つ動かせないでしょ。いつも通り座っててください、仕事の邪魔ですから。
ペンウッド ・・・すまん皆・・・すまんな。
ナレーション 部屋を出たインテグラとウォルターは決意を元に廊下を駐車場に向け歩いていた。
インテグラ 帰るぞウォルター、一刻も早く。
ウォルター はっ。
インテグラ 市内を突っ切る、出来るな。
140 ウォルター おおせのままに。
インテグラ 私は私の つとめをしよう、このヘルシングの身にかけて、吸血鬼ども!
ナレーション 道を兵士達が、並んで歩いて行く。遠くの敵と戦をする為、狂ってしまった時間の中に、死ぬ為だけに、歩き続ける。誰が知っていようか、奴らの腹の底、何も見えないほど、真っ暗なのに。風の吹く野原に立って、死体の数を数えている。広場で兵士たちが輪になって踊っている。だけどそんな暇は無い、逃げ延びる為に、命を長引かせる為に。世界の時計台から、腐ってしまった影が、赤い野原を散っていくのを、腕を、腕を、腕を組んで、笑っている。道を兵士たちが並んで歩いて行く、遠くの敵と戦をする為に。狂ってしまった時間の中に、死ぬ為だけに歩き続ける、歩き続ける、歩き続ける。

インテグラとウォルターを乗せた車が死都ロンドンを走り抜けている。車の通信機がペンウッドの通信を傍受した。
ウォルター インテグラ様!
ペンウッド ・・・本部のペンウッド将軍である。この通信が届いているかわからない。しかし、誰かに届いていると信じて通信する。もうすぐここは陥落する。化物たちが扉の向こうに、もうすぐそこまで、すぐそこまで来ている。本施設よりこの通信を聞く「人間達」に、最後の命令を送る。抵抗し、義務を果たせ。
通信士 将軍・・・もはやこれまで!私はゾンビになぞなるのは御免です。・・・お先に!
ナレーション 通信士は自らのコメカミに銃口をあて、引き金を引いた。ペンウッドもまたスイッチに指を添えていた。
ペンウッド さ、さようなら、イ、インテグラ。わ、私も楽しかったよ。
ナレーション 部屋のドアが蹴破られる音が響き、複数の足音と銃器がぶつかる音が消えた直後、爆発音が響き、通信は途絶えた。
インテグラ ・・・ウォルター。・・・急げ!!
150 ナレーション 車はグールと成り果てた市民を巻き込みながら走り抜ける。突然ウォルターが急ブレーキをかけ、車をとめた。
インテグラ 何事だウォルター!
ウォルター インテグラお嬢様、すぐに車をバックさせ、別ルートを探して脱出なさってください。
インテグラ ウォルター!
ウォルター 決して振り返らず!全速力で!いいですか、全速力で、全速力でです。決して振り返らず、何があっても全速力で逃げるのです。
インテグラ ウォルター!
ウォルター 早く!!今の この私では、あそこの あ奴に どれ程時を保たせられるものかわかりませぬ!
インテグラ ・・・ウォルター。
ウォルター はっ。
インテグラ 命令だ、必ず生きて戻れ、必ずだ。
160 ウォルター はっ、仰せのままに。
ナレーション インテグラは自らハンドルを握り、車を走らせた。ウォルターは月明かりの下に立つ男に向けワイヤーを放った。男は音速で放たれたワイヤーを見切り自らの腕に巻きつけた。
ウォルター ・・・やはり、やはり貴様か!!