METAL GEAR SOLID 09



補足】青色文字は通信中の台詞です
     【】内は情景等の補足説明です
     黄色文字は洗脳中の台詞です

01 ナレーション メタルギア製造工場に辿りついたスネークの前に、巨大なメタルギア・レックスが聳え立っていた。しばし傍観していたスネークに通信が入った。
ナオミ スネーク、聞こえる?私よ。
スネーク ナオミ!?・・・君は一体。
ナオミ 今、キャンベルさん達の目を盗んで別の無線機で話しをしているの。
スネーク ナオミ、マスターの話しは本当なのか?
ナオミ ・・・ええ。
でも、全てが嘘ではないわ。本当の部分もある。
スネーク 君は誰なんだ?
ナオミ 私にもわからない。親の顔も名前も・・・今の名前や戸籍はお金で買ったもの。
・・・私が遺伝子に固執した理由は本当よ。
スネーク 自分を知りたいから。そう言ったな?
10 ナオミ ええ、私は自分が誰だかわからない。年齢も、人種さえも・・・。
スネーク ナオミ・・・。
ナオミ 私はローデシアで拾われた・・・。孤児だったの。80年代のこと。
スネーク ローデシア?ローデシア独立戦争の頃か?
ナオミ ジンバブエはイギリス領土だった。当時はインド人が多く働いていた。だから、私の肌の色はその為かもしれない。
でも、それもわからない・・・。
スネーク ナオミ、どうして自分の過去にこだわる?今の自分を理解できればいいじゃないか?
ナオミ 今の私を理解?誰も私を理解などしてくれなかったわ。私はずっと自分を探してた・・・。
兄とあの人に逢うまではね。
スネーク 兄?
ナオミ そうよ。
・・・フランク・イエーガー。
スネーク !なんだって?
20 ナオミ 兄も少年兵士だったわ。ザンベジ川で餓死寸前の幼い私を拾って、自分の食べ物を割いてくれた。
そう、あなたが廃人にしたフランク・イエーガーは私の兄。唯一の家族。
スネーク 馬鹿な・・・。グレイ・フォックスが?
ナオミ 私達はあの地獄で生きのびた。兄が守ってくれた。兄は私の全てだった。私の存在を、私という個人を証明する唯一のより所だった。
スネーク 奴が君をアメリカに?
ナオミ いいえ。
モザンピークであの人に助けられた。
スネーク あの人・・・?ビッグボスか?
ナオミ ええ・・・彼は私達をこの自由の国へ導いてくれた。でも兄はあの人とまた戦場へ戻っていったわ。そして戻ってきた時には・・・。
私は復讐を誓った。兄を廃人とし、あの人を殺したあなたに。フォックハウンドに入ったのはそのためよ。ここにいれば、必ずあなたに逢える。そう思ったから。
スネーク ・・・思いは果たせたな?
ナオミ そうね、2年も待ったわ・・・。
スネーク 俺を殺す。ただそれだけの為に?
ナオミ ええ・・・。そう、2年。この2年間、ずっとあなたを待っていた。あなただけを・・・。恋焦がれるように・・・。
30 スネーク 今も、憎いか?
ナオミ ・・・少し違う。あなたのこと、誤解していた所もある。
スネーク リキッド達とは?
ナオミ 彼等も兄の仇よ。
スネーク まさか、君の前任者を殺したのも?グレイ・フォックスをゲノム兵の実験体にしたという・・・。
ナオミ クラーク博士のこと?いいえ、彼を殺したのは兄よ。私は事件を隠蔽し、兄をかくまった・・・。
スネーク ・・・忍(ニンジャ)。グレイ・フォックスは俺を殺すためにここに?
ナオミ ・・・違う、と思う。兄はただ、あなたと闘う為だけに・・・。初めはわからなかったけど、今はわかる気がするわ。あなたとの闘い。それだけのために兄は生きてるのよ、きっと・・・。
スネーク ・・・フォックス・・・。
ナオミ、教えてほしい・・・。
ナオミ フォックスダイの、こと?フォックスダイは特定人物だけを死に至らしめるレトロウイルスよ。まずフォックスダイは体内のマクロファージに感染する。フォックスダイにはタンパク質工学で生み出された認識酵素、特定の遺伝子配列に反応するようプログラムされた酵素が導入されているの。
スネーク その酵素で暗殺ターゲットのDNAを認識している?
40 ナオミ 認識酵素が反応して活性を示すとフォックスダイはマクロファージの組織を使って、TNFイプシロンを作りはじめる。
スネーク 何?
ナオミ サイトカインの一種で細胞死を誘発するペプチドよ。TNFイプシロンは血流に乗って心臓に達し、心筋細胞のTNFレセプターに結合する。
スネーク それで、心臓発作を?
ナオミ 刺激を受けた心筋細胞は急激なアポトーシスを起こすわ。そして、その人物は・・・死ぬ。
スネーク アポトーシス、細胞が自殺するための遺伝子プログラムか・・・。
・・・ナオミ・・・。
ナオミ ・・・なに?
スネーク ・・・当然俺も殺すようにプログラムしたんだろ?・・・まだ時間はあるのか?
・・・ナオミ、俺は君に殺されても仕方がない男だ。だが死ぬわけにはいかない。まだやる事が残っているんだ。
ナオミ ・・・聞いて、フォックスダイの使用を決定したのは私ではないわ。
スネーク 君じゃ、ない?
ナオミ あなたにフォックスダイを注入したのは、作戦の一部。それをあなたに伝えたくて・・・。
・・・私、自分に素直じゃない。
50 スネーク ナオミ?
ナオミ 私があなたに本当に伝えたかったのは・・・。スネーク・・・私・・・。
【誰かに押さえ込まれる】
きゃっ!・・・ううっ・・・スネーク・・・。
スネーク ナオミ!?
キャンベル ・・・スネーク、ナオミとの交信はこれ以上許されん。
スネーク 何!
キャンベル ナオミは作戦から外された。
スネーク ナオミはどうした!フォックスダイが作戦の一部とはどう言う事だ!?大佐、彼女と話しをさせろ!
キャンベル できん。彼女は監禁した。
スネーク 大佐!裏切ったな!?
キャンベル 今は余計な事を考えるな。メタルギアをくい止める事が先決だ。・・・スネーク、いいな。
ナレーション オタコンからの情報により、PALキーが温度で変化する形状記憶合金であることを知ったスネークは冷暖房の部屋を行き来し3種類のPAL入力を終えた。しかし解除される筈の起爆コードは起動を始めた。
スネーク 馬鹿な!俺は解除したぞ!?
60 マスター ありがとうスネーク、これで起爆コードの入力は完了した。もうメタルギアを止める事は出来ない。
スネーク マスター、これは?
マスター わざわざPALキーを見つけてくれた上、起爆コードの入力までしてくれて、本当に恩に着る。形状記憶合金だとはお粗末な話しだったが・・・。
スネーク 何のことだ?
マスター ダーパ局長の起爆コードは入手できなかったんだよ。マンティスの能力をもってしても読む事はできなかった。オセロットは起爆コードを聞き出す前に殺してしまった。つまり、俺達は核を撃つことはできなかった。威嚇発射さえもな・・・まさに八方塞がりだった。核が撃てなければ我々の要求は叶えられない。
スネーク マスター、何を言ってる?
マスター 起爆コードを入手できなくなった以上、別の方法を探すしかない。そこでスネーク、貴様に賭けてみる事にした。
スネーク 何?
マスター デコイ・オクトパスをダーパ局長に変装させたのも、その一つだ。貴様から情報を得ようとしたのだが・・・。フォックスダイとはな。
スネーク 全て最初から仕組まれていたというのか?俺に起爆コードを解除させるために・・・。
70 マスター ん?もしやここまで来られたのは自分一人の才能だと思っているのか?
スネーク マスター、あんたは?あんたはスパイか!?
マスター とにかくこれで核発射準備は整った。新型核を撃ち込んで見せれば、ホワイトハウスの連中もフォックスダイの血清を渡さざるを得まい。奴等の切り札も無効になる・・・。
スネーク 切り札?一体?
マスター お前を使ったペンタゴンの目論見は既に達せられているんだよ、あの拷問部屋で。知らないのはお前だけだ。フフフ・・・惨めだなスネーク。
スネーク 貴様、誰だ!?
マスター 全て教えてやる。もしも俺の元まで辿り着けたら、な。
スネーク どこにいる!
マスター すぐ近くさ。
キャンベル スネーク、そいつはマスター・ミラーではない!
マスター キャンベル、今頃気づいても遅い。
80 キャンベル マスター・ミラーの遺体が彼の自宅で発見された。死後3日経ってる。マスターの無線がオフにされていたのでわからなかった。通信士によると、発信源はその基地内だ。
スネーク じゃ、お前は?
キャンベル お前が話していたのは・・・。
リキッド 俺だ、兄弟。
スネーク まさか、リキッドか!!
リキッド 貴様の役割は済んだ、あの世へいけ!
ナレーション 部屋の扉が閉まり、壁の穴から毒ガスが噴出しはじめた。スネークはガスマスクを装着しながら通信する。オタコンの協力でドアセキュリティを解除し外に出たすネークは、メタルギアに搭乗しようとしているリキッド・スネークを発見し銃を構えながら叫んだ。
スネーク リキッド!なぜマスターに化けた。
リキッド 無論、貴様をうまく操る為だ。実際お前はよく働いてくれた。
スネーク クッ。
90 リキッド ペンタゴンの連中も、そう思ってることだろうよ。
スネーク さっきから何を言ってる?
リキッド 与えられた命令を疑いもしないとは・・戦士の誇りを失い、駒に成り果てたか スネーク?
スネーク 何?
リキッド 核発射の阻止、人質の救出、全て偽りの任務だ。
スネーク 偽りだと?
リキッド ペンタゴンとしては貴様と俺達が接触するだけでよかったんだ。アームズ・テックの社長とデコイはそれで始末されたんだ。
スネーク まさか・・・。
リキッド そうとも、俺達だけを暗殺し、莫大な予算を投じたゲノム兵の遺体と、メタルギアを無傷で回収するため。貴様は初めからフォックスダイの運び屋としてペンタゴンに送り込まれたんだ!
スネーク フォックスダイ・・・馬鹿な・・・。ではナオミは・・・ペンタゴンと組んでいたのか?
100 リキッド 連中はそのつもりでいたようだが・・・あの女 ただ利用されるような甘い女ではなかった。
スネーク 何?
リキッド ペンタゴンに潜り込ませたスパイが突き止めた。作戦直前、ナオミはフォックスダイのプログラムを改竄(かいざん)していたらしい。だがその理由も目的も不明だ。
スネーク まさか・・・ナオミを逮捕させたのは彼女の目的を掴むため?
リキッド その通りだ、くだらない恨みとは思わなかったが・・・。しかし、結局ナオミがフォックスダイにどのような改変を加えたかは今もわからない。まあ、それももういい。俺は既にホワイトハウスへの要求にフォックスダイの血清を上乗せしてある。
スネーク 血清があるのか?
リキッド あるはずだ、あの女にしかわからんがな。だが・・・もう、それも必要ないかもしれんな。
スネーク なぜだ?
リキッド 貴様は潜入に成功、奴等が処分したかった俺達は目論見通り暗殺ウイルスに感染した。オクトパスやアームス・テック社長の死因は確かにウイルスだ。しかし、オセロットも俺も・・・そして運び屋である貴様にもまだその兆候が現れていない。
スネーク フォックスダイの標的プログラムにバグが?
110 リキッド さあな、だが、貴様に効果が無い以上、俺も安全だ。俺と貴様の遺伝コードは同じなのだから。
スネーク やはり俺とお前は・・・。
リキッド そうとも、だがただの双子ではない。遺伝子に呪いを込められた双子、レス・エンファントス・テレブレス。
貴様はいい!親父の優性遺伝子を全てもらった。俺は劣性遺伝子ばかりを受け継いだ。全ては貴様という優性種を作り出す為の仕掛けだ。俺という存在は、お前の創造の為にだけあった。
スネーク 俺が優性だと?
リキッド そうだ、俺はその絞りカスだ。貴様にわかるか!?生れ落ちた時からクズと見なされ続けてきた惨めさが!・・・だが・・・親父は俺を選んだ。
スネーク それがビッグボスにこだわる理由か?歪んだ愛情だな。
リキッド ハッ、愛情だと?憎しみだよ。劣っていると知って俺を選んだことへの復讐だ!これも貴様にはわかるまい、実の親父をその手で殺すことが出来た貴様には!俺は復讐の機会すら貴様に奪われた。だから俺は、親父の遺志を実現してみせる。親父を超え、親父を殺す。
スネーク おまえもナオミと同じだ。
リキッド 俺は貴様とは違う。自分の遺伝子に刻まれた運命を誇りに思っている。フン!
スネーク 待て!
120 ナレーション リキッドは一瞬の隙をつきメタルギアへ乗り込みハッチを閉じた。
スネーク クソッ!
リキッド スネーク!この歴史的な兵器を拝みながら死んでゆけ、兄弟へのせめてもの気遣いだ。今から見せてやる、21世紀を導く悪魔の兵器をな。
スネーク 動き出してしまった・・・こいつを止める方法は!?
ナレーション ついにメタルギアが動き始めた。ミサイル、機銃、レーザー、錚々たる武器を携え、2足の巨獣は咆哮を響かせ地響きをあげながらスネークに迫る。スネークはオタコンの助言を元にチャフグレネードでメタルギアを撹乱し、スティンガーミサイルをメタルギアの左肩口にあるレドーム目掛け放った。命中したミサイルの衝撃でメタルギアの動きが止まった。
スネーク やったか!?
ナレーション 何もなかったかのように再び動き出したメタルギアは巨大倉庫の天井に届かんばかりの巨体を揺らしながら2本足でスネークに向かって歩き出した。たちまち逃げ場を失ったスネークを踏み潰さんと、メタルギアの足底が振り下ろされた。
スネーク クソッ!
リキッド 甘いぞスネーク!死ね!!
ナレーション 絶体絶命!その時、空を舞い地に降り立つ忍者が一人。その右手にビームカノンを装着し強化骨格に身を包みし忍者は、今にも踏み潰されんとするスネークの前に躍り出るとメタルギアの足底を仁王立ちで受け止めながら叫んだ。
130 フォックス 早く逃げろ!
スネーク グレイ・フォックス!
フォックス 懐かしい名前だ、ディープ・スロートよりは聞こえはいい。
スネーク やはり お前だったのか。
フォックス 見ていられないぞ スネーク、歳をとったな。
リキツド 死にぞこないめ!
ナレーション メタルギアの巨大な足がフォックスに迫る。フォックスは空中高く後方へ舞い上がり旋回しながら右腕に装着したビームカノンをメタルギアの左肩へ向け連射した。ダメージでバランスを崩したメタルギアの刺客をつき、スネークとフォックスはコンテナの影で対峙する。
スネーク フォックス なぜだ!なぜ俺に拘る!
フォックス 俺は死の囚人だ。お前だけが俺を解放してくれる。
スネーク フォックス、もうこんな事に関わるな、ナオミはどうする?ナオミはお前の為に復讐を・・・。
140 フォックス ナオミ・・・。
スネーク ナオミを止められるのはお前だけだ。
フォックス 俺にはできない。
スネーク どうして?
フォックス ナオミの両親を殺したのは俺なんだ。
スネーク ・・・!
フォックス まだ若かった俺は、あいつまでは殺せなかった・・・あいつを拾ったのは、後ろめたさに耐え切れなかったから、あいつの世話をしたのは、痩せこけた良心を満足させるため。それでも・・・ナオミは俺を兄と慕ってくれた。
スネーク フォックス・・・。
フォックス はたから見れば俺達は仲の良い兄妹に見えたかもしれん。だが・・・あいつに瞳を覗かれる度、俺はいつも怯えていた。お前から伝えてくれ 本当の仇はこの俺だと。
ナレーション メタルギアのセンサーがスネーク達を捕らえた。
リキッド そこか!
150 ナレーション メタルギアの機銃が周囲のコンテナを撃ち抜きながらスネーク達に迫る。
フォックス そろそろ決着をつける時だな。ディープ・スロートからの最後のプレゼントだ。俺が奴の動きを止める!
ナレーション フォックスがスネークの眼前を走りぬけメタルギアに向かって行く。
スネーク フォックス!!
ナレーション 機銃を潜り抜け宙に舞ったフォックスの左腕を、メタルギアのレーザーが切り裂いた。フォックスは溢れ出る血飛沫をそのままに、地上数十メートルまで飛び上がり壁の縁(へり)に飛び乗るとビームカノンを構えた。ビームカノン発射の瞬間、メタルギアはフォックス目掛け突進し、メタルギアの先端にある頑強なコクピット部分がフォックスの体を壁に挟みつけた。
リキッド 中東では狐狩りの代わりにジャッカルを狩る。
狐狩り(フォックスハウンド)ならぬロイヤル・ハリヒア。
スネーク フォックス!
リキッド 強化骨格がどこまでもつかな?スネーク!こいつを見殺しにするつもりか?
ナレーション フォックスはマックスレベルのビームカノンをメタルギアのレドーム目掛け放ち続けた。
フォックス 追い込まれた狐はジャッカルより凶暴だ!
160 スネーク !レドームが壊れた?
ナレーション レドームを破壊され視界を失ったリキッドは、コクピットドアを開け放した。
リキッド さすがフォックスの称号を持つ男!だがそれまでだ!
フォックス 今だ!スティンガーを撃ち込め!
スネーク フォックス!
リキッド 撃てるか!?こいつも死ぬぞ!
スネーク ・・・駄目だ、撃てない。
フォックス おまえの前で、これで本当に死ねる。ザンジバーランドの後、俺は戦いを取り上げられた・・・生きる実感の無い、ただ死んでいないだけの無意味な生。長かった・・・それが今 ようやく終わる。
リキッド 死ね!
ナレーション メタルギアはフォックスを地面に落下させると足底で踏みつけた。
170 フォックス スネーク!俺達は政府や誰かの道具じゃない!戦うことでしか・・・自分を表現できなかったが・・・いつも自分の意志で戦ってきた。スネーク・・・さらばだ・・・。
ナレーション 踏みつけていたメタルギアの足底が上空高く上がり再びフォックス目掛け振り下ろされた。フォックスの体は砕け散り、鮮血が地面に円を描いた。
スネーク フォックス!!
リキッド 愚かな男だ。死を懇願した時、勝敗は決まる。わかったろう!貴様は誰も守れやしない!自分の身さえな!死ね!!
ナレーション 迫り来るメタルギア、放たれるミサイルを掻い潜りスネークは接近戦を挑んだ。機銃を回避したスネークに向けてメタルギアのレーザー放たれようとした時、スネークが放ったスティンガーミサイルがコクピットを破壊した。次の瞬間、メタルギアは咆哮に似た爆音を響かせながら鉄屑の屍と化した。
爆風に巻き込まれ意識を失ったスネークが再び瞳を開いた時に見た光景は、メタルギアの頭頂部に横たわる自分の姿と、背中を向けて立つソリッド・スネークの姿だった。
リキッド 相変わらず目覚めは悪いようだな。
スネーク リキッド・・・生きていたか。
リキッド 俺は死なん。貴様が生きている限りは。
スネーク 残念だったな、蹶起(けっき)とやらは失敗だ。
リキッド メタルギアを失った程度で俺は闘いを終わらせる気はない・・・。
180 スネーク 闘い?貴様の本当の狙いはなんだ!?
リキッド 俺達のような戦士が活かされる時を再び築き上げる事。
スネーク それはビッグボスの妄想だ!
リキッド 遺志だ!親父の・・・。冷戦の時、混沌の時、世の中が俺達を欲した、俺達を評価した、俺達は必要とされた。
だが今は違う、偽善と欺瞞が横行し、争いがこの世から消えていく・・・。
自分を生かす場が失われる空しさ、時代から必要とされなくなる恐怖。おまえにはよくわかるだろう?
俺は新型核を利用して当面の運動資金を得る、そして世界的なテロを行い、このふやけた世の中を再び混沌の世界へと誘う。紛争が紛争を呼び、新たな憎しみを生む。そして、俺達の生態圏は拡大していく。
スネーク 人の支配が続く限り、世界中のどこかで紛争は起こっている。
リキッド バランスが問題なんだ、親父の目指したバランスが。
スネーク それだけの理由で?
リキッド 十分な理由だろう?俺や貴様にとっては。
スネーク 俺はそんなものは望まない!
リキッド ハッ、嘘をつけ。ではなぜ貴様はここにいる?仲間に裏切られながらも任務を投げ出さずになぜここまで来た?
・・・俺が代わりに言ってやろう、殺戮を楽しんでいるんだよ 貴様は。
190 スネーク 何を!
リキッド 違うとでもいうのか?貴様は俺の仲間を大勢殺したじゃないか?
スネーク それは・・・。
リキッド とどめを刺すお前の顔・・・実に生気に満ちていたぞ。
スネーク 違う!
リキッド 自分の内の殺戮衝動、それを否定する必要はない。俺達はそのように造られたんだからな。
スネーク 造られた・・・だと?
リキッド レス・エンファントス・テレブレス 恐るべき子供達、その計画はそう呼ばれた。1970年代のことだ、最強の兵士を人為的に生産しようという計画だった。雛型として選ばれたのは、当時生きながら 伝説の傭兵として名を馳せていた男・・・。
スネーク ビッグボスか。
リキッド だが親父は戦場で負傷、すでに不能者だった。だから俺達は親父の体細胞を使って造られた。前世紀のアナログクローン技術とスーパーベイビー法によって。
スネーク スーパーベイビー法?
200 リキッド 細胞核を使って造られた受精卵を分割、8人のクローンベイビーを子宮に移す。その後 ある時期で6つの胎児を意図的に間引き 犠牲にすることで成長能力を増大させる手法だ。俺達はもともと8つ子だったんだよ。
スネーク 8つ子・・・。
リキッド そう、俺達を造るために6人の兄弟が殺された。俺達は生まれ落ちる前から人の死に関与していたんだ。そして俺と貴様、同じDNAを持つ2つの受精卵が生き残った。
だが・・・それで終わりじゃない、俺は生贄にされた!優性遺伝子だけど発現された表現型、貴様を造るために劣勢遺伝子ばかりを発現させられた。貴様は兄弟の命を奪って生まれたんだ!
だが・・・生き残った兄弟は俺と貴様だけではないぞ。
スネーク 何?
リキッド ゲノム兵達だよ。彼等も親父の遺伝子を受け継いでいる。俺達と違ってデジタルな方法で。
前世紀にヒトゲノム計画が完了し、遺伝子の動きが調査された。親父の遺伝子情報のおかげで、すでにソルジャー遺伝子はキラー・インスティンクトと言われるものも含めて60以上発見されている。判明したソルジャー遺伝子は、その都度 遺伝子治療を経て次世代特殊部隊隊員に組み込まれる。それがゲノム兵だ。
そうとも、お前がこの基地で殺してきたゲノム兵は、俺達と同じDNAを持つ兄弟なんだよ。
スネーク ゲノム兵が・・・。
リキッド ああ・・・。親父の遺伝子配列から作為的に造り出された いびつな生き物、彼等は同胞だ。多くの犠牲の末に生まれたという意味でも。
スネーク 犠牲?
リキッド 人体実験だ。
91年 湾岸戦争 軍は極秘裏にソルジャー遺伝子を兵士に注入していたんだ。帰還兵の間で問題になっている「湾岸戦争症候群」(ガルフ・ウォー・シンドローム) はこの副作用だ。
スネーク 馬鹿な、湾岸戦争症候群(ガルフ・ウォー・シンドローム)の原因は、劣化ウラン弾の放射能や殺虫剤が原因のはずだ。
リキッド みなペンタゴンが流したカバーストーリーだ。他にも神経症説、化学兵器説、細菌兵器説・・・いろいろある。毒ガス探知車の導入や 対サリン薬の投与も遺伝子実験を隠蔽するための策略だった。
スネーク それでは・・・帰還兵の家族で起こっている「ガルフ・ウォー・ベイビー」も・・・。
210 リキッド そう、彼等こそ俺達の最初の兄弟だ。
スネーク それで完成したのが次世代特殊部隊?
リキッド 完成?馬鹿をいうな、出来損ないだ。
・・・俺達は滅びかけているからな。
スネーク 何?
リキッド 左右非対称の理論という言葉を聞いた事があるか?
自然界では左右非対称が標準だ。逆に絶滅種には左右対称の兆候が見られる。
ゲノム兵にも現れているんだよ、その左右対称の兆しが。それは俺にも・・・そして貴様にもあるはずだ。
そうだ、俺達は皆 遺伝子レベルで死にかけている。いつ発病するかわからん。
それを調べる為にも、親父のゲノム情報が必要なのだ。
スネーク ビッグボスの遺体を要求したのは、同属を救うためだとでもいうのか?
リキッド 兄弟同士は子を為(な)さない。それにも関わらず助け合うのはなぜだか知っているか?
同種の遺伝子を後世に伝える確立が高くなるからだ。自然選択の末、血縁は互いに利他行動をとるようになった。遺伝子には血縁を助けるように記されている。
スネーク ゲノム兵を助けるのは遺伝子の命令だと?
リキッド 誰も遺伝子に逆らう事はできない、それは運命だ。まして俺達は・・・親父の遺伝子を再現する為にだけ生み出された存在だ。だから・・・俺は自分の遺伝子に従う。そしてそれを乗り越える。呪われた運命を打ち破るために。
そのために・・・まず貴様を殺す。
後ろを見てみろ!
ナレーション 背後を振り向いたスネークの瞳に、後ろ手を手錠で拘束され横たわったままの、メリルの姿が映った。
220 スネーク !メリル!・・・生きているのか?
リキッド どうかな?数時間前までは息をしていた。何度も貴様の名前を呼んでいた・・・。
スネーク メリル・・・。
リキッド 馬鹿な女だ、名前も無い男に惚れるとはな。
スネーク 俺にも名前はある!
リキッド 無い!俺達には過去も未来も無い。あると すれば・・・親父から受け継いだ遺伝子に刻まれている運命が全てだ。
スネーク メリルを放せ!
リキッド お前との決着をつけたらな。俺達にはもう時間が無い。
スネーク フォックスダイのことか?
リキッド いや・・・メタルギアの破壊を知ったペンタゴンはある決定を下したそうだ。もはや目標破壊評価(ボンダー・レポート)の必要も無い。詳しくは聞き耳を立てている ご立派なキャンベルに聞いてみるがいい。
230 スネーク 聞こえるか?大佐!
キャンベル ああ・・・聞いている。
スネーク ペンタゴンは何をしようとしているんだ。大佐、答えろ!
キャンベル ・・・国防省長官自らが作戦の指揮に乗り出した。早期警報管制機でそちらへ向かっている。
スネーク 何のために?
キャンベル 空爆だ。
スネーク なんだって?
キャンベル それだけじゃない、先程、B2爆撃機がカレーナ基地を離陸した。地表貫通式戦術核爆弾B61-13を搭載してな。
スネーク まさか?メタルギアは破壊した。ちゃんと国防長官に伝えろ!
キャンベル 長官はナオミの裏切りを知って、フォックスダイの効果に疑問を持った。スネークのメタルギア破壊で核攻撃を受ける恐れもなくなった今、彼はもっとも直接的な方法で事実の隠蔽を図るつもりなんだ。
240 スネーク ・・・全ての証拠とそれを知る者をこの基地ごと核で吹き飛ばすつもりか。
キャンベル スネーク、だが心配するな。核攻撃は私が中止させる。
スネーク 何?
キャンベル 例え形式だけであっても、本作戦の指揮権は私にもある。私が爆撃中止命令を出せば命令系統が混乱し、少なくとも時間は稼げるはずだ。その間に脱出しれくれ。
スネーク 大佐、そんなことをすれば・・・。
キャンベル いいんだ、スネーク。・・・実は極秘裏にフォックスハウンドの内定捜査は行われていたんだ。そしてメリルは蜂起当日に、この作戦に編入された。私を脅迫する材料として・・・。
スネーク くだらん。
キャンベル ・・・すまなかった。メリルの命と引き換えに協力を強いられていたのだ。
さあ、早く逃げろ、スネーク。
スネーク いいのか?・・・全てを失うぞ。
キャンベル 構わんさ。本当に失ってはいけないものを、守ることができる。
250 スネーク 大佐・・・。
キャンベル さぁ爆撃停止命令を出そう。これで後戻りはできんな・・・。
【何者かに押さえ込まれる】
ぐあっ!何をする!
スネーク 大佐!?どうした!
ジム ロイ・キャンベルはたった今、解任した。私は国防省長官、ジム・ハウスマンだ。
スネーク 大佐を出せ!
ジム 機密漏洩と国家に対する反逆罪で逮捕監禁した。
スネーク 馬鹿な・・・。
ジム そう、馬鹿な男だ。指揮権を与えられたと、本気で信じていたとはな・・・。
スネーク 貴様・・・!
ジム 全てを海に沈める。大統領もそれを望んでおられるだろう。
スネーク 大統領命令か?
260 ジム 大統領は忙しい。私が全責任を負っている。
スネーク アメリカ国内を核攻撃してマスコミにどう説明する?
ジム 心配するな。隠蔽用のカバーストーリーは用意してある。テロリストが核を暴発させたという事にする。
スネーク くそっ!ここの研究員もゲノム兵の連中もみんな死ぬぞ。
ジム ドナルド・・・。ダーパ局長は死んでしまった・・・。
スネーク やはり、ダーパ局長は殺すつもりはなかったんだな?
ジム 奴は親友だった。
スネーク 他の連中は、どうでもいいっていうのか?
ジム そうだな、光ディスクの内容を転送すれば考えてやってもいい。
スネーク 何のことだ?
ジム 今回の演習データだ。ドナルドが持ち帰るはずだった。
270 スネーク 持っていない。
ジム そうか、まあいい・・・。貴様ら二人は、70年代の恥部だ。誰もが蒸し返したくない暗部だ。このまま生かしておくわけにはいかない。爆撃までの時間、せいぜい仲良くな。旧態政府の亡霊達。
ソリッド お互い脱出路は絶たれたようだな。空爆の前に決着をつけよう。貴様は俺から何もかも奪った。貴様を、貴様の遺伝子をここで否定することで、俺はその全てを取り返してみせる。
【メリルを見下ろしながら】
お前との決着には美しい生け贄だ。
【視線を移しながら】
みえるか?この時限爆弾が。これは俺達の決着を刻む砂時計だ。この女を死へ誘うと同時に、この核モジュールも吹き飛び仕組みになっている。貴様が勝てば女は助かるかもしれない、空爆までの一時を女と愛しあう事もできる。
この高さだ・・・ひとたまりもない。
いくぞ!スネーク!
ナレーション 男達の肉弾戦が始まった。互いの肉体を駆使した壮絶な格闘戦が繰り広げられる!パンチ、キック、タックル、投げ、様々な技が繰り出され、肉が脈打ち、骨が軋む。リキッドのパワーファイトにメタルギアの端へ追い込まれるスネーク。リキッドの蹴りがスネークの体をぐら付かせる、とどめとばかりにリキッドがタックルをしかけた。スネークは身を後ろに回転させながら、リキッドの体を後方へと蹴り上げた。宙に舞ったリキッドの体はメタルギアの装甲を滑るように闇深き地上へと落ちていった。