METAL GEAR SOLID 07


【補足】青色文字は通信中の台詞です
     【】内は情景等の補足説明です
     黄色文字は洗脳中の台詞です

01 ナレーション スネークは通信棟の前までくると、扉に手を掛けた。その瞬間、女の声と共にゲノム兵達の銃口が一斉にスネークに向けられた。不意を突かれたスネークは銃を下ろし、降参するしかなかった。妖艶な風貌の女がスネークの前に歩み出た。
ウルフ こんなに近いと外す方が難しいわね。武器を前に投げて!ゆっくりね。
のこのこと戻ってくるなんて、バカな男・・・。
スネーク 女のスナイパーか。
ウルフ 世界の一流暗殺者の65%が女だって事 知らないの?ここで死ぬか、あの女の死を確認してから死ぬか、どちらを選ぶ?
スネーク 死ぬのは お前を殺してからだ。
ウルフ そう、少しは芯があるのね。
私はスナイパー・ウルフ。狙った標的は必ず 自分の手で倒す。
お前だけは・・・私が狩る・・・わかった?
ナレーション ウルフはスネークの頬に手を添えると、爪をたて引っ掻いた。スネークの頬に血が滲む。
ウルフ 標的にしるしを付けたわ。忘れない。お前をしとめるまで、お前しか見えない。
ナレーション ウルフの合図でゲノム兵がスネークの頭部を殴打する。スネークは地面に倒れ、気絶した。
スネークが再び目を覚ました時に見たものは、四肢を特殊な機械に固定された己が裸身だった。
おぼろげな意識の中で声が響いた。
10 リキッド まだ殺すな、生かしておけ。
オセロット 私にまかせて下さい。
リキッド いいか、ダーパ局長の二の舞は踏むなよ。
ウルフ この男は私がターゲッティングした。
リキッド 気がついたか、ソリッド・スネーク?
ウルフ 思ったよりタフな男ね・・・。
リキッド 俺が誰だかわかるか?いつか貴様に逢う事になると思っていた。俺から光の部分を奪った男。貴様のおかげで俺は・・・。
俺か?俺は貴様にポジティブな部分を奪われた男だ。多くの兄弟達の犠牲の上に生まれ落ちて以来・・・まさに30年ぶりの感動の対面だ。「光」と「闇」のな。
ウルフ この男のゲノム情報も必要なの?
リキッド ああ、殺す前に生きた組織を貰う。ゲノム兵達の奇病を治療するために。
ウルフ それで治るの?
20 リキッド いや・・・ビッグボスのゲノム情報を手に入れなければ駄目だ。
ウルフ 奴等は交渉に応じたの?
リキッド まだだ。
ウルフ あいつらが交渉に応じるはずはない。あの連中は偽善者ばかりよ。
リキッド クルド人としての意見か。
ウルフ 奴等、いつも政治を優先する。
リキッド 心配いらん。奴等が何よりも避けたいのは、新型核兵器が明るみに出る事だ。
オセロット ボス、スネークがお目覚めのようです。
リキッド 確かに似ている所もあるようだな。我が弟よ。いや、兄貴というべきか。まあ そんな事はどうでもいい。お互い「ビッグボスの息子達」の数少ない生き残りだ。
ナレーション リキッドの通信機が鳴った。
30 リキッド 俺だ・・・そうか・・・で?・・・ふざけた奴等め!わかった、レイブンすぐに行く・・・。
奴等は交渉に応じない。予定通り 10時間後に1発目を発射する。
ウルフ  チッ!!アメリカ人め!
オセロット 読みが外れましたね。
リキッド これ程強気に出てくるとは・・・。臆病者の政府(ホワイトハウス)らしくない。それとも何か切り札を持っているのか?
オセロット さあ?とにかく これで記念すべき新型核弾頭の発射に立ち会えるわけですね・・・。
リキッド 俺は発射準備に入る。後を頼むぞ オセロット。
オセロット ウルフ、お前はどうする?私のショーを見ていくか?
ウルフ 私は興味がない。家族に食事をあげる時間だ。
オセロット そうか、私のショーより狼の方がいいか?
リキッド オセロット、局長のようにしくじるな。
40 オセロット わかってます。あれは事故だったんです。ただの民間人があれほど我慢強いとは・・・。
リキッド おそらく催眠療法により精神防壁が張られていたんだ。
オセロット ボス、あの忍者は?
リキッド 12人もやられた。あの男は既に正気を失っている。
オセロット 私も腕を・・・。
どうして奴がここに?
リキッド 俺達の中にスパイがいるかもしれん。
マンティスは死んだ。
ベイカー社長とオクトパスの死因も調べねばならん。
人手が足りない、無駄な時間は取れんぞ。拷問もほどほどにしろ。
オセロット 拷問?これは事情聴取ですよ。
リキッド どちらでもいい。
【スネークを見ながら】
じゃあな、兄弟。
ナレーション リキッドが部屋を後にすると同じくして、ウルフがスネークに近付き囁いた。
ウルフ 女はまだこの世界にいる・・・。
50 スネーク メリル?
ウルフ また・・・楽しみましょう。
ナレーション ウルフも部屋を後にする。部屋にはスネークとオセロットだけが残った。
オセロット あの女は標的を決めると他には盲目になる。時には恋愛感情さえ持つようになる。さあ、これで二人っきりになれた。どうだ気分は?
スネーク 悪くはない、回転ベッドで熟睡させてもらった。一人で寝るにはもったいない。
オセロット そいつはよかった。このベッドは優れもんだ。じっくりと教えてやる。これからな・・・。
しかしワシントンも大胆な賭けに出たもんだ。よっぽどお前の働きに期待しているんだな。
・・・運び屋?
スネーク やはりメタルギアの装備されているのは新型の核弾頭なのか?
オセロット ああ、詳しくはキャンベルにでも聞いてみたらどうだ?
スネーク 大佐に?
オセロット ところで、あの光ディスクはベイカー社長から預かったものだな?
60 スネーク それがどうした?
オセロット 光ディスクはあれだけか?他にデータは?
スネーク 何のことだ?
オセロット コピーは無いんだな?無ければいい。
スネーク メリルは無事なのか?
オセロット 女は死んでいない。ウルフが気紛れをおこしたおかげでな。だがこれからも行き続けられるかどうかは お前次第だ。鍵を持ってたろ?残り2つの鍵はどこにある?あの鍵の仕掛けとは何だ?
スネーク 仕掛け?
オセロット あのタヌキ社長が仕組んだとかいうトリックの事だ。
スネーク 知らん。
オセロット そうか、まあいい。
これはゲームだ、ソリッドスネーク。お前がどれほどの男か試してやる。我慢できなくなったら服従しろ。そうすれば止めてやろう。だがその時は・・・あの女の命をもらう。
高圧電流が貴様の身体を流れる。短時間であれば命に別状は無い程度のものだ。
70 スネーク そういう趣味はない。
オセロット まだ余裕があるようだな。いいかスネーク、お前は戦争捕虜ではない、お前は人質だ。ジュネーブ条約も関係ない。ここでは誰も助けてはくれん。思いっきり感じさせてくれ!
ではいくぞ。
ナレーション スネークの全身に高圧電流が流れる。
オセロット どうだ?効くだろう。
私はアフガニスタン、モザンピーク、エリトリア、チャドでも闘った。アフガンゲリラの間でシャラシャーシカの渾名で恐れられていた。私のはグルー仕込みだ、KGBの連中とは違う・・・これは拷問ではない、スポーツだ。
スネーク サディストには違いない。
オセロット 制服連中と一緒にされては困る。
もう一度いこうか。
ナレーション 再び高圧電流がスネークの全身を駆け巡る。
オセロット 服従するか?どうだ?
なげかわしい時代よな。帝政、全体主義、ペレストロイカ、確かに20世紀のロシアは問題を抱えていたが、イデオロギーがあった。今のロシアにはなにも無い。
まだ終わらないぞ!
スネーク 自由と秩序の葛藤。混沌の中で再びナショナリズムに目覚めたか。
オセロット グルー本部長とスペツナズの最高司令官を歴任した実力者とも話しがついている。彼は今回の新型核システムを購入してくれる。ハインドDはその前金だ。
80 スネーク 目的は金か?
オセロット 金など必要ない。ロシア再建、新しい世界秩序。
お前にも理解できるはずだ。私達は今のような世界では生きては行けない。私達には緊張が必要だ。今の世界は腑抜けている、感情を押し潰した偽りの時代だ。だから世界を目覚めさせ本来の姿に戻す。欲望と猜疑、???(きょうだ と蛮勇が入り混じる緊張に満ちた世界の実現。
それはお前が望むものでもあるんじゃないか?
リキッド・スネーク、大した男だ。奴は本気でそれをやろうとしている・・・。
もう一度いくぞ。
ナレーション みたび高圧電流がスネークの全身を駆け巡った。
オセロット なかなか強情な奴だな、今回の所はこれくらいにしておこう。
さすがはボスの兄弟、クールだ。あの男、若いが大した奴だよ。ハインドでF16を撃墜するとはな。あのプロジェクト・・・レス・エンファントス・テレブレスも失敗ばかりではなかったということか。あんな奴は見た事がない、奴こそ、私の夢を実現してくれるかもしれん。
スネークを連れて行け。
ナレーション ひきづられ連れて行かれる途中で、スネークは意識を失った。再び目を覚ました時には、牢獄のベッドの上であった。鼻をつく異臭の方向を見ると、そこにはダーパ局長の腐乱した死体があった。
スネークは通信を開始した。
キャンベル スネーク、どうだ・・・大丈夫か?
スネーク ああ・・・状況は変わらない。
ナオミ スネーク、私にできることある?
スネーク ああ、腕が痛い・・・。
ナオミ ・・・そう、かわいそうに。鎮痛剤の量を増やしてみるわ。
90 スネーク 眠くはない。デキセトリンは投与しなくていい。性欲を持て余す。
ナオミ それだけ元気があれば大丈夫ね・・・。
スネーク ナオミ、何か話をしてくれ、苦痛を紛らわしたい。
ナオミ どんな?
スネーク 何でもいい。
ナオミ 私、自分から話すのは苦手・・・。
スネーク そう、君のことが聞きたい。君の事を話してくれ。
ナオミ 私のこと?・・・難しいわね。
スネーク 家族は?
ナオミ 私には愉快な話題じゃないわ。
100 スネーク 俺には家族はいない・・・。いや、一人父親を名乗った男がいた・・・。
ナオミ その人は?
スネーク 殺した。俺がこの手で。
キャンベル ・・・ビッグボス、か。
ナオミ え?ビッグボスが?
キャンベル 君が知らないのも無理はない。6年前・・・ザンジバーランド・・・。真相を知る者は、今では私とスネークだけだからな。
ナオミ そんな・・・。ビッグボスは・・・。本当にあなたの?
スネーク ・・・奴はそう言った。それだけが事実だ。
ナオミ あなたは、それを知っていて、彼を?
スネーク ・・・ああ。
110 ナオミ どうして!
スネーク ・・・それを望んだからだ。俺も・・・そして奴も。
ナオミ そんな・・・親殺しなんて・・・。
スネーク ああ。・・・俺の人生のトラウマだ・・・。マンティスの言う通りな。
ナオミ フォックスハウンドを離れたのは、そのせいなの?
スネーク 【暗い雰囲気を変えようと、おどけた感じで】
・・・アラスカの厳しさが心地よかったのは確かだ。
ナオミ スネーク・・・。・・・私も・・・本当の家族はいない。大学まで進学させてくれた兄が一人。血はつながっていない。兄と言っても歳は随分、離れていたけど。
スネーク その人は?
ナオミ ・・・もういない・・・。
スネーク ・・・そうか。
120 ナオミ スネーク、恋人とか・・・いるの?
スネーク 一度、戦場での緊張状態を経験すると、日常生活では誰も信用できなくなる。
ナオミ 友達は?
スネーク ・・・キャンベル大佐。
キャンベル ははははは。まだ私を友人と呼んでくれるのか・・・?
ナオミ それだけ?
スネーク いや、もうひとり・・・フランク・イエーガー。
ナオミ えっ!?
キャンベル ビッグボスから最も信頼され、部隊内で唯一フォックスの称号を与えられた男・・・。グレイフォックスだ。
ナオミ ・・・。
130 スネーク 俺は奴から、いろんな事を学んだ。
ナオミ でも・・・。殺しあったんじゃ?
スネーク 確かにザンジバーランドで俺は奴と闘った。だが敵意があったわけじゃない。それぞれ敵と味方に振り分けられていただけだ。
ナオミ そんな友情なんて?
スネーク ありえないか?戦いは友情を終わらせるものではない。
ナオミ そんなのおかしい。
スネーク 最初に逢ったのは戦場だ。奴はアウターヘブンで捕虜となっていた。しかし、俺には奴が捕虜には見えなかった。あくまでも冷静に的確に、新米だった俺をサポートしてくれた。
ナオミ それから、親密に?
スネーク いや、プライベートでのつき合いはない。俺達は皆、そうだ。次に戦場で逢った時は敵対する関係になっていた。俺達は地雷原の中、素手で殴りあった・・・。奇妙な程、健全な時間だった。正義も悪もない、スポーツのような一体感があった。
ナオミ おかしいわ。それもただの暴力よ。殺し合いよ。
140 スネーク ああ、そうだと思う。
ナオミ そんな関係なら、あの忍者はどう説明がつくの?
スネーク わからない。
ナオミ あなたの遺伝子には殺戮を誘発するものが書き込まれているのよ!
スネーク 妙にこだわるな、その話。
君はどうして遺伝子の研究を?
ナオミ ・・・私、両親の名前も顔も知らないから・・・。自分は一体誰なのか?それが知りたかった。
スネーク それでDNAを?
ナオミ そう、私は遺伝子を突き詰める事で、私のアイデンティティを取り戻そうとしたのね。ゲノム情報を解析すれば、人の遺伝子に秘められた私の空白の記憶を取り戻せると思った。
スネーク そこに記憶はあったのか?
ナオミ わからない。でも人の運命までもがたった4つの塩基配列で刻まれているなんて。
150 スネーク 俺のDNAの未来は?俺の塩基配列は知ってるんだろ?
ナオミ あなたに未来・・・。未来は・・・。ごめんなさい。わからないわ。
スネーク だろうな。君は科学者だ。預言者じゃない。
ナレーション 通信を追え疲れた体を休めていたスネークを扉の格子ごしに呼ぶ声があった。
オタコン おい!こっちだ!
スネーク !どこだ?
オタコン 僕だよ。
スネーク オタコン!
オタコン 君でも捕まったりするんだ?
ナレーション スネークは格子から手を伸ばしオタコンの肩を揺さぶりながら話した。
160 スネーク 早くここから出してくれ!メリルも捕まっている。
オタコン いたいよ!離してくれ!
スネーク 急いでるんだ!
オタコン それが人にものを頼むタ態度かよ?離してくれ!
ナレーション スネークが手を放すと、オタコンがよろめくように一歩下がった。
オタコン まいったな、これじゃ野獣の檻だよ。ひでぇ臭いだし。
スネーク その男を見てみろ。
オタコン あぁ!ダーパ局長!
スネーク 早くしないと俺もこいつの隣りに並ぶ事になる。
オタコン ひどい連中だ・・・。ここの鍵はセキュリティ・カードでは開かないんだ。兵士が持っている鍵でしか開かない。
170 スネーク じゃあ 何しにきた。
ナレーション オタコンはポケットから缶詰を取り出した。
オタコン これを・・・お腹が空いただろうと思って。食料なら また持ってきてあげるよ。あと、これも・・・。
スネーク なんだこれ?
オタコン ハンカチだよ、スナイパー・ウルフからもらった。
スネーク どうして?
オタコン なぜだか、彼女だけは僕に優しいんだ。
スネーク ストックホルム症候群か?
オタコン 僕はここの狼犬の面倒を見てたんだ。テロが起こった時、奴等は犬を見殺しにしようとした。犬達にエサをやりたいと言ったら彼女は許可してくれた。彼女も犬が好きなんだ。彼女は良い人さ、だから、彼女を傷つけないで。
スネーク いいか 目を覚ませ!その女にメリルは撃たれたんだ!
180 オタコン ・・・僕ができるのは ここまでだ。
スネーク 奴等は核を使うつもりだ、食い止めなければならない。
オタコン あそこに行くには通信棟を超えないといけない。
スネーク その前にここから出してくれ!
オタコン わかってくれよ、これでも がんばってるんだ。
スネーク 見張りがここの鍵を持ってる、あいつを倒してくれ!
オタコン 冗談じゃない、僕は兵士じゃない、そんな事できない!
スネーク やるんだ!
オタコン 殺されるに決まってる。
・・・それじゃ、見張りが戻ってくるから。じゃあ!
スネーク まて!!
190 ナレーション オタコンはステルス迷彩を作動させ姿を消し去っていった。
程なくして見張りが銃を携え監視に戻ってきた。
暫くして、突然見張りの叫び声が聞こえ、監獄のドアが開いた。
スネーク オタコンか?そうか、助けに来てくれたんだな?
ナレーション 扉の前を残像が通り抜けた。
スネーク 忍者?
ナレーション スネークは監獄を抜け出し装備品を奪取すると、一路通信棟を目指した。