吸血鬼ハンターD  北海魔行T - 北の海へ -
謎を秘めた「珠」を抱いた少女ウーリンはクローネンベルクの街を目指していた。
しかし少女は。街の顔役ギリガンの手に落ち、「珠」を狙って魔人たちは跋扈(ばっこ)する。
少女ウーリンの最後の願いを受けて、Dは「珠」とともにフローレンスの村を目指す。
追うのはギリガン4人組にクロロック教授、そして孤高の修行者グレン。
北海の猟村の貴族伝説、そして「珠」に隠された秘密とは?
1
(語り)
風荒れる闇夜は獣草(けだものぐさ)の花弁が開く。青銅の犬は群れを成して辺境の危険を知らぬ旅人の喉笛を狙う。だが遥かに危険な者達は、暖かな宿屋に巣くっていた・・・。
クロロック教授 ほう、クローネンベルクにのお、フローレンスの漁師たちは皆勇敢と聞いてはおるが、それにしてもあんたのような娘さんがそんな長旅とは。
ウーリン たいしたことは無いわ。
さかしまのトト そいでお嬢さん、一体何しにいくんだい?
ウーリン え!?
さかしまのトト そんな驚いた顔をしなさんな。さっきからここに座ってたんだ。俺はトトってもんだがね、せっかくこんな裏街道で一夜を共にする仲だ。旅の目的くらい聞かせてくれてもいいだろう?
ウーリン ええ・・・だけど。
クロロック教授 やめなされ お若いの。他人のことを詮索しないのが旅の掟というものだ。
さかしまのトト そうかい、じゃ、せめて名前くらい聞かせてくれよ。
10 クロロック教授 あ、これは失礼した。クロロック教授と呼んでもらおうか。正式な学位ではないがね。
さかしまのトト ほお、あんたがね。
ウーリン ウーリンです。
クロロック教授 娘さん、わざとそんな荒っぽい格好をしているが、本当は良い所で育てられたようだね。今のはちゃんと躾られた態度だ。
ウーリン かいかぶりよ、あ、ご主人、もう一杯頂戴。
クロロック教授 ああ、そんなに一度に飲むものじゃない、どれ、酔って無くしたら大変だ、その手荷物こっちにお渡し、ワシが朝まで預かってやろう。
ウーリン 結構よ!
さかしまのトト 大分大切なものでも入っているようだな。
ウーリン 大したものじゃないわ、見たければどうぞ。
クロロック教授 こいつは・・・
20 さかしまのトト 村で・・・取れたもんかい?
ウーリン そんな所、どうしたの?ただの石のようなものよ。

(語り)
少女が手を握ればあっさりと隠れてしまいそうな、半透明の珠だった真の球体ではなく、あちこちに歪みが生じている。材質は不明だが、その鈍い光を見れば、宝石の類(たぐい)で無いことは明らかだった。だが宿屋の男たちの顔には、一瞬驚きが走り、それはすぐに消えた。
ウーリン もういいでしょ?
さかしまのトト 真珠じゃねえな、でか過ぎる。
ウーリン そのようなものよ。
クロロック教授 察するにそれを売りにきたわけか、だが、残念ながらそれは・・・。
ウーリン なんですって?
さかしまのトト お!窓の外を見てみなよ、青銅の犬だ。あんな奴らも夏にさえなればどっかに行っちまうんだ・・・夏にさえなればな。
ウーリン この森を抜ければ、一日半でクローネンベルグ。軽い軽い、ねっ、姉さん。
30
(語り)
ウーリンという少女の悲劇は、翌朝すでに始まっていた。悲劇はまず、まるで無害そのものに見える老人の姿をとって現れた。老人は手に干した動物の皮を丸め持ったまま近づく。
クロロック教授 お早いお立ちだな、もっともこちらも ご同様だが。年寄りの朝は早いと相場が決まっておる。どうだね?せっかくの縁だワシが共にクローネンベルクまで就いていってやろう。この先も夜昼無く、物騒な化け物が出ることがある。
ウーリン あら、目当てはあたしとは思えませんわね?
クロロック教授 そうでもないが、まあ後で揉めるのも面倒なので最初に決めておこう、付き添いの駄賃は例の珠で結構じゃ。
ウーリン ウフフッ、やっぱりね。変に勘ぐられて寝首を掛かれないよう、わざと見せておいたのだけど、あの珠の価値をご存知?
クロロック教授 夕べの2人よりは。だが真の値打ちはまだわからん。それを知る為にも渡してもらおうか。
ウーリン 残念ね、旅は一人に限るわ、じゃあね!
クロロック教授 気の早い娘だ。だがその顔は私の脳裏に焼きついている。

(語り)
クロロック教授は、走り去る獲物を追う素振りも見せず謎の行動をとる。干皮を広げるやそこにペンを走らせる。だがそのインクは自らの手首を刺して獲た赤い血潮。瞬く間にそこにウーリンをモデルとした顔が描き出された。クロロックのヒビ割れた唇が絵に近づいた。
クロロック教授 そこに立ち止まるのだ。そして私の言うことに従うがいい。
40 ウーリン あたし何故こんな・・・そうね、立ち止まればいいのね・・・。
クロロック教授 クックックックッ、そうだ、そこにおるのだ。今私が行くからな。・・・ん!なんだこれは!私の足が勝手に向こうを向いて歩いていく!娘から遠ざかる!どうしたことだ、まるで思ったことと反対に・・・まてよ!トト・・・トト・・・そうか!奴あ さかしまのトトか!抜かったわ!

(語り)
クロロックの謎めいた術に魂を奪われたウーインは放心したまましゃがみこんでいた。そこに近づく影が一つ。
さかしまのトト 学者顔しやがっておかしな術を使うたあなんて奴だ。まっ、狙いは俺も同じだがよ。すまないね お嬢さん、催眠状態のあんたから物を貰うのは気がひけるんだが・・・!うあ!!こりゃあ!ランチャーか!
ウーリン きゃあっ!
ウーリン あれは宿のご主人!
さかしまのトト やっぱり来やがったか。親切そうな顔をして仲間をつれてやがる。嫌な世の中だぜ。珠は預けておくぜ、生き延びられたら又頂に行く、あばよ!
ウーリン あ、ちょっと!

黙って珠を渡すと思ってるの?怪我をしてから泣き言は聞かないわよ。

!誰!?

(語り)
休む場所を探していた耳に、ことの成り行きは届いていた。だが、何故わざわざ一人の少女の為に身を晒したのか。短い間に辺境のあらゆる不幸を見せ付けられた少女に、せめてたった一つマシな目を見せてやりたかったのか。
さかしまのトト つば広のトラベラーズハットに黒のロングコート、背中にぶら下がってるのは長剣だな。見たところ、流れの剣士ってところか。あの兄さん、飛び道具持ってるあいつら相手にどうしようってんだ?

ばっ!馬鹿な!なんて奴だよ・・・あっという間にみんな倒しちまった・・・。
ウーリン
(心の声)
!なんて人・・・まるで空気でも斬っているみたいに男たちを次々と斬り倒して・・・だけど・・・何故?彼の剣はとても残酷なのに、あたしには・・・恐怖が・・・無い。それはこの人のせい?この人が、あまり美しいから。
60 ウーリン ありがとう、助かりました。
歩きか?奴らの馬を貰え。
ウーリン あ、あの、よかったら、一緒に。
俺は塒(ねぐら)を探さねばならん。陽が高くなる。
Dの左手 よいのか?あの珠がある限り、娘は無事にはすまぬぞ?
ウーリン !え?
いや・・・。
ウーリン あの、せめて名前を!あたしはウーリンです!
・・・D・・・そう、俺はバンパイアハンター・・・D。
Dの左手 菊地秀行原作、バンパイアハンターシリーズD 北海魔行 第一話 〜北の海へ〜。
70
(語り)
西暦、12090年 人類は暗黒世界を生きていた。究極まで科学を推し進めた人類の文化はやがて大規模な世界大戦により消滅した。その後巡ってきたのは、放射能と宇宙船が生んだミュータント達の支配する世界。わずかに生きのびた人類たちも、その水準は大きく退行した。そして現れたのだ、歴史の彼方に消えていた吸血鬼たちが。人類よりも優れた科学と、強靭な肉体を持っていた彼らは貴族を名乗り、幾世代も人類を支配した。だが、昼の光を、十字架を、川の流れを敵とした吸血鬼たちは、やがて、相次ぐ人間たちの反乱にあい、それを嫌うようにその姿を歴史の中に消した。わずかに都を離れた、辺境地区を除いては・・・辺境地区では、いまだに強く貴族の恐怖が生きていた。そしてその恐怖は、時折り現実のものとなって、人々に襲い掛かる。そんな人々の希望として生まれたのが、吸血鬼と戦うことを生業とする、バンパイアハンターだった。
ウーリン はあ、やっと見つけた。ここ、クローネンベルクで一番大きい骨董屋でしょ。ちょっと見てもらいたいものがあるんだけど。

(語り)
珠の値打ちを測られた骨董屋は即答せずに預からせてほしいとウーリンに告げた。故郷フローレンスには無い活況に包まれたこの街の雰囲気に、ウーリンはついつい承知してしまう。だが彼女は知らなかった。この街の影で、すでに大きな影が彼女を包み始めていることを・・・。
国王エグベルト この部屋らしいな、いいご身分だ。フンッ!
さかしまのトト !なっ!いきなりドアを蹴破って入ってくるとはどういうつもりだ。
思い出サモン 先程、サイラスの骨董屋から お前が奪ったものはどこにあるのかしら?
さかしまのトト なんのことだか。
国王エグベルト 隠すな、お前が まやかしに掛けた骨董屋はすでにギリガンに連絡した後だったんだ。ギリガンは怒り狂い、その者を捜し求めている。あまつさえ、持ち込んだ小娘さえも捕らえたという話だ。
さかしまのトト 参ったねえ・・・やっとあの お嬢さんが手放したんで安心して手に入れたってのに。ギリガンってのはこの街の有力者かい?ああ、わかってるよ。あんた達を一目見れば俺とは別の世界の人間だって分かる。手向かいするほど馬鹿じゃねえや。だがな、珠はここにはねえぜ。大事なものを女を抱くってのに持ってくるかよ。
思い出サモン 服を着て案内をし。
さかしまのトト それにしてもあの娘は可愛そうになあ・・・あんた達みたいに おっかない連中を飼ってる男だ。そのギリガンって お人、女子供にも容赦ねえだろう?可愛い子だったのになあ・・・。
80 思い出サモン 無駄口を叩くな、行くよ。
国王エグベルト !チイッ!なんだこれは!俺の足が突然回れ右をして言うことを聞かぬ!
思い出サモン クッ!相手を思った方向と逆に進ませてしまうという、これが さかしまの術だね!トト!
さかしまのトト ヘヘッ、悪いな。
思い出サモン ええい!チンピラと踏んで抜かった!追うよ!エグベルト!

(語り)
田舎の漁村から出てきた少女は、街の地下に隠された拷問部屋で、最後の時を迎えようとしていた。彼女の前に立つ死神は、ブヨブヨと膨れ上がった自分の肉体を支えきれずに、機械の骨格に包まれて移動している。彼の名は、ギリガン。クローネンベルクの夜の王だった。
ギリガン ふう〜はあ〜、おお〜かわいそうにな お嬢さん。でもすぐだ。話せばすぐに楽になれる。
ウーリン 鎖を外して!ここから出して下さい!
ギリガン もちろんだとも。でもその前に教えておくれ。あの珠はどこで、どうやって手に入れた?
ウーリン !あの骨董屋さん。
ギリガン ほーほっほっほっ、ワシの息がかかっておった。せっかくの価値もわからず大切な物を持ち込む馬鹿から巻き上げた代物をワシに献上する役目でな、は〜は〜。
90 ウーリン 返して!返して下さい!
ギリガン ざ〜んねん、今ここに無い。コソ泥に盗まれてね。知ってるかね、トトという男だ。だがすぐに取り返すさ、ふーふふふふふふ。ワシには誰も知らない5人の味方がいるのじゃ、ヘヘ、は〜ふ〜。
ウーリン 近寄らないで。
ギリガン 意地悪しないで教えておくれ、どうしてアレをあんたが持ってる?まさかフローレンスの特産品とは言うまい?
ウーリン フンッ!
ギリガン そうか、言いたくは無いか、だが私は知ってるんだよ?あれはフローレンスの伝説にある貴族にまつわるものではないのかね?
ウーリン 何も知らないわ。
ギリガン そうかね、だがお嬢さん、あんた誤解してるよ、わしゃ無理に話してくれなくてもいいんだ。ああ、むしろそのほうが楽しみは増える。さあ お前、出ておいで。ヘッヘッヘヘヘ。
ウーリン 虫!?
ギリガン 私が飼ってるカタリベという虫でね、相手の体を這いずり回った挙句噛み付く。すると相手は告白癖がつくという可愛い奴さ。バ〜ッ!さ、お行き。クククククク。
ウーリン イヤッ!こないで!お願い、これを剥がして!
100 ギリガン フフフフフフ
ウーリン いやあ!やめ!やめ!やめて!ああああ!いやああ!あああああ!!
ギリガン おほほほほ、痛かったかね?ふふっ、さあ、お喋り。ふーはははは!ふーはははは!
さかしまのトト はあっ、はあっ、はあっ、はあっ。

(語り)
さかしまのトトは、今、見知らぬ裏通りを走り抜けていた。彼の心は、まだ恐怖に包まれたままだ。そんなトトの耳に口笛が聞こえた。
さかしまのトト 今の口笛はあんたか?俺に何か用かい?それとも・・・あんたもギリガンの・・・。
修行者グレン ギリガン?知らぬ。だが窓を破って逃げる胡乱(うろん)な奴を放ってはおけぬだけだ。

(語り)
月光を浴びた青い影が立っていた。長身をマントに包み、精巧な造りの刀を腰に下げ、その全身に張り詰めた雰囲気はトトが一歩でも動けば生かしてはおかぬと宣言していた。殺気を穂飛ばしらせるだけの野獣、だが、この野獣はひどく美しい。時折りこのような人間がいる。
修行者グレン 来い、保安官に引き渡す。
さかしまのトト ま、待ってくれ俺は別に何も、見逃してくれよ。
110
(語り)
野獣は先程と同じように口笛を奏で始める。
さかしまのトト だ、だったら、勝手に逃げるぜ。
修行者グレン ふんっ!
さかしまのトト ぐああっ!ぐ・・・お・・・ま、参ったぜ、俺の術が通じないばかりか・・・5メートルあった間合いで、俺の腹を斬り裂くとはな・・・
修行者グレン 修行者にまやかしは通じない。ん?なんだそれは?
さかしまのトト ヘッ・・ヘヘッ、なんだか知らねえ珠よ・・・こんな物の為に、命を落とすことになるとはな・・・。
Dの左手 Dよ、あれはあの娘の持っていたものじゃぞ。
修行者グレン !誰だ!
その珠の持ち主に用がある。
修行者グレン ほう。
さかしまのトト そ、そうかい・・・あ、あんた、あの時の兄さんだね。丁度いいや、あの娘を助けてやっちゃくれねえか?代償は、その珠だ。ヘヘッ、俺は・・・ここまでらしいが・・・頼むぜ・・・あの娘はギリガンって野郎の所だ、なっ・・・頼むぜ・・・。
120 修行者グレン 珠を拾ったな。行くのか?こんな男の言葉に従って。
さあ
修行者グレン 美しい男だな。俺より美しい男、始めて見る。だがそれ故に名を知ることが出来た。辺境に流れる一つの名、バンパイアハンターD。その名に対して名乗る、俺はグレン、修行者だ。・・・そうか、行くか。

(語り)
すでに拷問部屋の悪夢は終わっていた。今放置された物言わぬ少女の前に、一人の老人が立っている。
クロロック教授 こいつわ惨い。カタリベに刺されたものは30分以上苦しんで死ぬというが、この娘まだ息がある。
ウーリン あ・・・貴方・・・どうしてここに?
クロロック教授 お前さんの身を案じてな。まあ、案の定じゃったが。
ウーリン お、お願い・・・あたしの姉に・・・珠を・・・取り戻し・・・て。
クロロック教授 よかろう、必ず取り戻してやるとも。イヒヒ、さ、安心して死ぬるがいい。
ウーリン ディ・・・D・・・
130 クロロック教授 死んだか。・・・!お!貴様いつからそこに!
お前が忍び込んだすぐ後だ。
クロロック教授 そうか・・・お前がDか。お!お前その珠をどこで手に入れた!?
この珠がどうかしたか?
クロロック教授 その珠はワシが預かろう。聞いておっただろう、娘がワシに頼んだのだ。珠を取り戻し、姉に渡してくれとな。
娘の姉はどこにいる?
クロロック教授 だからワシが届けてやると言っておる。ん!貴様珠をどこに隠した!?
Dの左手 ンバハッ!ペペッ!これ!いきなり何を食わした!?
クロロック教授 なんじゃと?
娘はすでに死んでいた。だがそれでも願いを告げた。告げた相手はお前だと思うか?
クロロック教授 だから色男のお前は届けると、そういう理屈か?
140 もう一度だけ聞く。娘の姉はどこだ?
クロロック教授 ま、待て!丸腰のワシを斬る気か。あ・・・う・・・わかった。娘の故郷はフローレンスじゃ。
北の・・・村か。
クロロック教授 待て!よかったらワシがそれを買い取ってやっても・・・
Dの左手 出来ぬ相談じゃな。
クロロック教授 面倒な事になったか。だが一度ワシが顔を見た以上、Dよ、お前も逃れることは出来ん。

(語り)
呟きながら筆を走らすクロロック。やがてその血に染まった筆は皮の上に稚拙(ちせつ)ながらハッキリと美しいバンパイアハンターの顔を写し出した。

少女から全てを聞き出したギリガンは、自宅の離れに現れた。醜怪(しゅうかい)なこの男は街を支配する道具として多くの魔人達をここに飼い慣らしている。決して日の当たる世界に生を受けられぬ魔人達。
ギリガン ギリガンだ。居るかい?エグベルトさん
国王エグベルト おお!
ギリガン サモンの姉さん。
思い出サモン はあい。
150 ギリガン シンさん。
傀儡のシン ああ。
ギリガン ツインさんもいるね。さてと・・・エグベルトさん、サモンさん。例の物、取り戻してきてもらえたでしょうね?
思い出サモン 生憎と、そうはいかなかったんだよ。
ギリガン なんだって・・・それで済むと思ってんのかい!!スネに持つ傷一つや二つじゃないあんたらを腕利きと信じてこの家に食客として招いていた俺はとんだ眼鏡違いかね!!
国王エグベルト まあそうガミガミ言うな。嫌な奴が絡んできやがったい。
傀儡のシン さかしまのトトの他にか?
思い出サモン トトは死んだわ、殺したのは風来坊の修行者。
傀儡のシン 珠はそいつが?
160 思い出サモン 珠を持って行ったのは奴よ、思い出すだけで寒気がする・・・あいつ・・・バンパイアハンター・・・D。
傀儡のシン そうかあいつが・・・こいつは面白い。
ギリガン 面白いかね?
国王エグベルト うむ、面白い。
ギリガン そいつだけじゃねえ、どうやらあのクロロック教授も珠を狙ってるらしい。
国王エグベルト あいつか。
ギリガン すまないが御一同にはフローレンスに行ってもらわなけりゃならねえ。
国王エグベルト 辺境の名士ばかりというところだな。
ギリガン 娘は珠をフローレンスで手に入れた。Dは珠をそこに持っていくだろう。うまくすりゃもう1個ばかり珠が手に入るかもしれねえ、頼む、フローレンスへ行ってくれ。もし珠を取り返してくれれば、俺の土地と財産を全て譲ろう。珠が手に入ればもういらぬ物だ。
傀儡のシン あの珠はそれほどの物か。
思い出サモン 一体あれは何なのです?
ギリガン あんた達にとっては何の意味も無い物、それ故話しておこう。骨董屋の持っていた本にはたった一行だけこう書かれていた・・・貴族の遺伝子と。
傀儡のシン それで一体何が出来る?
170 ギリガン 知らんほうがいい・・・どうなんだ?フローレンスに行ってくれるのか?
傀儡のシン 一つ聞こう。もし5人全員が戻ってきたら?
ギリガン 分け前は5等分さ。
国王エグベルト つまり、戻ってくる人数が少ないほど儲けは増える、か。そうと決まれば俺は行くぜ。珠とやらを持ってきてやる。
思い出サモン あたしも
ギリガン シンさん、あんたは?
傀儡のシン 無論ワシも。どいつもこいつも相手を出し抜こうとしてやがる、楽しくなってきたな。
ギリガン フフフフフッ、それでこそ俺が見込んだ連中だ。頼むぜ、バンパイアハンターぶち殺し必ず珠を持ち帰ってくれ。俺はどうしてもあの珠が欲しいんだ。ヘヘヘヘヘヘヘ、ヘ〜ヘヘヘヘヘ!
180
(語り)
一瞬の後、すでにそこには5人の魔人の姿は無く、ただ不気味に笑い続けるギリガンだけが、機械の枠組みの中に横たわっていた。
ギリガン は〜、ふ〜、今度こそ、俺の願いが叶う、今度こそ。ヘヘヘ・・・!お前は!Dか!いつのまにこの部屋に入った。
ウーリンという娘をカタリベに噛ませたのはお前か!?
ギリガン 知らねえな。娘はとっくに帰したはずだ。・・・!お前!庭の護衛犬はどうした?まさかみんな、斬ったのか!?
あの娘をどうした!
ギリガン そ、そうか、お前も珠の秘密を知りたいのか?い、いいとも、お、教えてやる。だから・・・ヒッ!・・・娘のことは謝る。だがな、き、き、き、斬る前に見てくれ、この俺の体を!太っちまって、改造し続けて、とうとうこんな機械で体を覆ってなきゃ一歩も動けなくなっちまった・・・・なあ、D・・・おりゃ死にたくねえんだ、無限に生き続けてえ、だから機械を揃えた、怪しい薬の試した、肉体再生手術を繰り返して寿命を延ばし続けてきた。
死ぬべきだったのだ。
ギリガン おりゃ死にたくねえ!・・・お前だってそうだろD?・・・やっとみつけたんだ、永遠に生き続ける鍵を・・・おりゃああの鍵を絶対・・・
ハッ!
ギリガン ヒイッ!・・・へ、へへ、ヘヒヒヒヒヒ!見たか!見たかよD!イヒヒヒヒ、俺の体を覆っているこの檻はゼラン鋼で出来ている。レーザーだって1ミリ斬り込むのに1時間かかるって代物・・・グハッ!ま、まさか・・・ゴボッ!お前の、その腕・・・人間じゃねえな!、!そうか!お前か!人間と貴族の間に生まれたダンピールってのは!ゴブッ!
190 苦しみ抜いて死ぬがいい。
ギリガン 俺は・・・なりたかったんだ・・・永遠の命を持ちた、ゴボッ!・・・あの、珠さえあれば・・・おえは・・・貴族になえう!ゲバッ!
Dの左手 どうやら、あの珠にはとてつもない秘密があるようじゃな。このワシも知らぬ秘密とは、さすが北の果てよな
行くぞ、フローレンスへ。
Dの左手 かってにせい!もの好きな奴じゃ。

(語り)
人々は、巨大な水の流れの前で船を待っていた。船は海を渡るのでもなく、川を下るのでもない。貴族たちが築いた巨大な水路をつたって、危険な陸路を避けた旅をするのだ。船着場に、人目を引く美しい剣士が一人、グレンと名乗った男であった。
スーイン あ、船がついたようよ。
修行者グレン 女の一人旅とは物騒だな。
スーイン こんな格好でも女に見える?ありがと。でも格好なんて気にしちゃいらんないのよ、もうすぐ夏だからね。せめて夏ぐらい楽しく暮らせるように稼がないと。今日も市場でさばいてきた所さ。
200 修行者グレン 夏か・・・今はこんなに肌寒いがな。
スーイン どんなに今は寒くても、来るのよ夏が。・・・どうかした?
修行者グレン さっきから気になっていたんだが、この船が岸を離れる寸前、誰かが飛び乗ったような気がする。
スーイン 追われているの?
修行者グレン 追われているような、いないような。
スーイン あっ!子供が船から落ちたわ!なんとか船にしがみ付いてるけど、今にも沈みそう!何ぼやっとしてんのよ!助けてあげないの!?
修行者グレン うむ。
スーイン 大丈夫よお母さん、この人が助けてくれる。
修行者グレン その手を離して、さ、坊や、大丈夫、手を掴め。
ぬうっ!
スーイン やったわ!引っ張り上げた!
!何するの!貴方!
修行者グレン クッ!
210
(語り)
グレンが子供の手を掴んだ刹那、今まで母親だった女は、その手に短刀を握り背後から突きかかった。普通の人間にかわすすべはない。だがグレンは子供を胸元に引き上げると同時に片手で刀を抜いた。斬っ先は吸い込まれるように女の腹を貫いていた。
スーイン なっ!今度は父親が剣を!?貴方たち一体何考えてるの!?子供を助けてもらって!
修行者グレン 離れていろ・・・無駄だ。・・・いいだろう・・・俺の剣から目を離すなよ。

(語り)
それは奇妙な言葉だった。相対したものから目を離す者がいようか、だが、その言葉の意味はすぐに知れた。
二人は同時に剣を下段に構えた。だが、グレンが口笛を吹き出すや異変が生じた。グレンはゆっくりと剣を持ち上げる、するとつられる様に父親の剣も上がっていく。二人はやがて同時に上段の構えを取った。寸分たがわぬ鏡のように。だが、それが父親の意思によるものでないことは彼の顔色をみれば明らかだった。
修行者グレン ふんっ!

(語り)
互いの剣は同時に振り下ろされた。明暗を分けたのは、グレンが踏み込んだほんの一歩である。父親の剣がグレンの脇をかすめ、グレンの剣は父親の脳天を二つに割った。グレンは振り下ろした剣を今度は子供目掛け一閃する。
スーイン どうしてこんな惨い!すがってきた子供を振りほどき、しかも腕を斬り落とすなんて!
修行者グレン 落ちた腕を見てみることだ。
スーイン これは・・・毒針!
修行者グレン しがみ付いて刺そうとした。少なくとも子供ではないな。そしてさっきの両親も本物の人間ではあるまい。貴様、何者!
傀儡のシン ハッハッハッハッハッ、どこでわかった?
修行者グレン 同情を煽るつもりだったのか?母親に手を握らせたのは余計だったな。脈の無い女というのは始めてだ。
220 傀儡のシン そうか、お主程の相手を倒すには、ちと調整が甘かったかな。バンパイアハンターD!
それも間違いだな。
傀儡のシン なに!?貴様、どこからこの船に、船着場にはいなかったな。
修行者グレン やはり。出航寸前に飛び乗ったのはお前か、D。
ギリガンの手のものか?
傀儡のシン 早耳じゃなあ、ワシは傀儡のシン。お前を追っている5人のうちの一人だ。覚えていろ、珠は必ずワシが貰い受ける。
ギリガンは俺が斬った。もはや依頼者はいない。
傀儡のシン 奴のことだ、その手抜かりはあるまい。奴から財産を受け継いだものから報酬を取ればよい
Dの左手 成る程の、そういう理屈か。
傀儡のシン でわな、D。そこの男も必ず決着はつける。
次はない!ハッ!

あっ!?
スーイン これ・・・人形だわ、じゃあ今まで話していたのは人形?
230 傀儡のシン フフハハハハハ、ハハハハ、ハハハハハ、また会おう!D!
スーイン みんな、みんな人形に変わっていくわ・・・さっきの両親も、他の人たちも・・・ハッ!もしかして、人間は私たち3人だけ?!
Dの左手 奴が名乗った傀儡とは操り人形のことじゃ。だが、都にも辺境にも、見せ物としてのマリオネットはあっても、あんな精巧なものは存在せぬ。
だが、今はそれよりも片付けなければならぬ問題があるようじゃな。
修行者グレン ・・・D。
グレンだったな。
スーイン ど、どうしたの二人とも、今度は二人で怖い顔・・・ちょっとお!
修行者グレン お前を追い続けて一週間、どうやら目的地の検討もついたので、こうして先回りしていたというわけだ。
何故追う?
修行者グレン フフッ、すくんでしまったからな。
すくんだ?
修行者グレン あの晩、俺は初めて他人を恐ろしいと思った。刃も交えんのにな・・・だから来た・・・俺はお前を斬る。それまで俺は自分が許せない。
・・・いいだろう。
240 修行者グレン ここではやらん、いずれふさわしい場所と時をえた時に。
スーイン グレン・・・
Dの左手 戦うために生まれたような奴。はて、やっかいな。
スーイン ねえ待ってよ、貴方もフローレンスに行くんでしょ?だったら乗ってかない?
いや。
スーイン いいじゃない、グレンはどっか行っちゃうしさ、あたしスーイン、よろしく。

(語り)
どこか荒っぽく化粧一つしていないその娘の招きは、何故か断れない魅力を秘めていた。素直だからか、純真だからか、いや、気丈に隠れて潜む暗い心が見えるからか。
スーイン そう、Dっていうの。いい名前、悲しそうな風に似てるわ。
Dの左手 ぶははははっ!オゴッ!こらっ!何をする!(口を抑えるDに言っています)
スーイン D!あなた腹話術をするの?
250 さあな。
スーイン あ、あそこの水路を見て。海から来た氷解が、こんな所までさかのぼってきてるわ。こんな光景を見れば誰もこの北の地方に夏が来るなんて思わないでしょうね。
夏、か。
スーイン 貴族たちは天候制御装置で地球上のいかなる場所の天候も自在にしていたんでしょ?
そう言われている。だが、ウエザーコントローラーも一万年はもたなかったし、貴族を滅ぼした人間たちは貴族の遺産を全て破壊した。
スーイン 故障したウエザーコントローラーのおかげで、この地方は厳しい寒さに包まれたわ、不思議な話よね、山2つ先の村の気候は温帯なのに。だけど、こんなとこでも夏は来るの。ウエザーコントローラーの気まぐれなのよ、年に必ず7日だけ、ふいに暖かい日がやってくる。あたしたちは毎年、それだけを待ち望んでいるんだわ。
そういえば、フローレンスには貴族の遺跡があったな。
スーイン フンッ!マインスター男爵の城ね、普通の人なら近づかないわ。あなた貴族に興味があるの?
俺は・・・バンパイアハンターだ。
スーイン 聞いたことがあるわ、ゾッとするほど綺麗で、変わった名前で・・・ダンピール。
・・・あ!
どうした?
スーイン あそこ!洞窟の入り口に誰か立っている!
260 全身水浸しだ。何をしている?
Dの左手 だがあの顔を見ろ、豊かな金髪、眼差し、鼻筋、どれを取っても貴族に違いない、これは驚いた。水に浸かり平気でいる貴族など・・・。
スーイン D!何をするの!?
確かめるまでだ。・・・フンッ!
なに!?奴はどこに行った!?
Dの左手 消えおった・・・お前が斬りつけた瞬間にな、だが・・・幻とも言いがたい。足元を見ろ、海水が溜まっておる。
どういうことだ!?
Dの左手 貴族の・・・亡霊かのう?こりゃ珍しい。
スーイン D!大丈夫!?
ああ、急ぐとしよう。

(語り)
闇を抜けて、馬車は水路沿いに走り続けた。獣の谷を、魔物の森を。東の空に ほのじろいあかつきが差し恵む頃、道の果てに見えたのは朱に染まる海原、鉛の静けさを持つその海に、抱かれるように眠っている小さな漁村。そこがフローレンスだった。
スーイン さあ、あとは一本道よ。ここまで来たんだから送ってくわ。フローレンスの誰を訪ねるの?
ウーリンという娘の家だ。
270 スーイン !はっ!
知り合いか?
スーイン ・・・あなたから、その名前を聞きたくなかったわ・・・あたしの妹よ、ウーリンは。
・・・では、この珠を受け取れ。これで私の役目は終わりだ。
スーイン そう・・・妹は死んだのね・・・だけど、あなたみたいな人がわざわざ・・・届けてくれるなんて。
末期(まつご)に頼まれた。
スーイン だけどそれは受け取れないわ。受け取りでもしたら、あなたはこのままいなくなってしまうでしょう。せめて、せめて一晩だけでもウーリンの話を聞かせて、祖父も家にいるのよ。
Dの左手 ほれみたことか。
黙れ。

わかった、世話になろう。
スーイン ほんと!?
さあ、もう ひとっ走りよ。
280
スーイン ・・・そうだったの・・・やっぱりあんな珠を持たせて一人で行かせるんじゃなかった。
船で見たとおりだ、奴らはまだ珠を諦めてはいない。
スーイン スーインの亡骸は、帰ってこないんでしょうね・・・。
・・・綺麗な死顔だった。
スーイン ありがとう。
話はこれで終わりだ。コーヒーをありがとう。
スーイン まだ行かないで!・・・だってあなたが言ったんじゃない、この珠を狙って恐ろしい連中が村へ、いえ、もう来てるかもしれない。
珠を渡せ、どんな値打ちかもわからぬ、命には代えられまい。
スーイン 前ならそうもしたわ、だけど今はもう出来ない。妹が命と引き換えに、あなたに託した品よ。
俺の相手は貴族だけだ。
スーイン 貴族?貴族ならこの村にもいるわ。
290 初耳だな。
スーイン 当然よ、貴族がいる村なんて知れたら、魚を買ってもらえなくなる。
あ、お爺ちゃんが帰ってきたわ。お爺ちゃん、この人はねスーインの・・・
!何するのD!お爺ちゃんに剣を突きつけるなんて!
よく化けた、ギリガンの4人組の一人か!

(語り)
スーインの祖父に化けていたギリガンの手の者は、自ら悟られずのツインと名乗ると特殊なアメーバ状の液体を目くらましに逃走を図った。だがその液体は俺の左手に吸い取られ同じくして俺の剣がツインの首をはねていた。
スーイン !お爺ちゃんじゃない・・・。D、なんでお爺ちゃんじゃないって分かったの?
匂いだな。かすかだがギリガンの屋敷で嗅いだ匂いがした。
スーイン じゃあ、本当のお爺ちゃんは・・・もう・・・。
おそらくは・・・珠をここへ、俺が預かる。
スーイン え?
奴らはこの家に気付いている。
320 スーイン ここにいてくれるの?
俺を雇うなら、報酬はあの珠だ。そしてもう一つ、珠の由来を教えてもらおう。
スーイン ・・・はい・・・この一体は、マインスター男爵と呼ばれる貴族と、その仲間たちの別荘地帯だったの。信じられる?流れ水を渡れないという貴族たちが水遊びをしていたというのよ。もちろん潜水艇を使うのだけれど。
その頃はここも温暖だった。
スーイン ええ、だけど彼らにとって最大の遊びは、生物の遺伝子を操ることだったわ。海中に大量の薬品をばらまき、海中生物に突然変異をうながしたのよ・・・その結果ここいらの海は見るも無残な生物の成れの果て・・・。怪物というのもおぞましい生物に満たされたわ。
だがどんなに生物を変化させても、自分たち自身が海には入れるようにはなれなかった。
スーイン その腹いせもあったのかしら、彼らは人間たちも都から連行してきて、奴隷として使い、わざと吸血鬼にして同じ人間たちによって殺させたりもしたらしいわ。だけど、ある時をさかいに彼らの姿はここから消えてしまう。
何が起こった?
スーイン わからないわ、言い伝えでは、ある時旅の男が現れて、恐ろしい力で全ての貴族を退治し追い払ったという。マインスターは抵抗して殺され、海に沈められたと・・・それから千年、貴族の噂なんか無かったのに・・・。
だが貴族が出没するようになった・・・いつからだ?
スーイン 3年前よ。現れるのはいつも夏の七日間だけ。しかも彼は、海からやってくる。
Dの左手 馬鹿な、貴族が海の中で平気でいるなど。
330 ありえない。
スーイン みんなは言ってるわ、マインスター男爵の亡霊だって。だけど・・・違うのよ、城に残されている男爵の肖像画とは顔がまるで違う。
珠は?
スーイン 去年の夏、また被害者が出たわ。あたしは悲鳴を聞いて貴族を追った。だけど貴族は海に消えたあと。その時、足元で光っているものを見つけて、拾ったのよ。

(語り)
ツインの屍骸は無縁墓地に、本物の祖父の亡骸の埋葬も終えたその夜、ある気配が俺を夜の海岸へと誘い出した。月は無い、星も見えない、その中で、この目だけが見た。激しく打ち寄せる波間に、腰まで浸かって立つマントの男。
Dの左手 洞窟で出会った奴じゃ。
マインスター男爵!海より蘇ったか!

(語り)
波が打ち寄せ、そして引いた。波がなめした海面には、もはやいかなる生物の姿も発見出来ない。彼は再び、海に消えたのだ。
Dの左手 なんとも、凄まじい力を感じた。敵に回せばお前とて危ない。
かもしれん。
Dの左手 だが、だがな、よくわからんが、あ奴ただの貴族でもなさそうだ。貴族であって貴族でなし、だれかさんに似ておるな・・・哀しい目をしておった、血に狂っておるくせに実に哀しい目であった・・・それも、誰かに似ておる。
やめろ。
Dの左手 北の風だ、北の海とお前、そして あ奴、今この村を立ち去れば、忘れねばならぬことが一つ減るかもしれんぞ・・・どうした、Dよ。
340
(語り)
北の町に、3人の殺し屋と謎めいた学者、海から来た貴族、それを追うハンターが集った。その中心には一つの珠と娘・・・風はあくまでも冷たく、三日後に来るという夏は予感すらも感じることは出来なかった。俺はいつまでも暗い海を見つめている・・・身動きもせずに。